Research Abstract |
本研究課題では,病原細菌由来のmicroRNA群から,ヒトmicroRNAと相同性を有する分子を選出し,ヒト細胞株に添加した際の病原性について検索することを目的としている.具体的には,細菌山来のmicroRNAの中から,ヒトの遺伝子発現に関与するヒトmicroRNAと高い相同性を有するRNA(=オーソログRNA)を検索し,ヒト遺伝子の発現機構の破綻や組織の恒常性の混乱を引き起こす可能性を調べる計画である. 二ヶ年計画の初年度は,まずA群レンサ球菌株の全RNAフールから,効率的に細菌のmicroRNAクローニングを行う実験系の確立を試みた.その結果,以下の実験手順で高効率なmicroRNAクローニングが可能となった,すなわち,(1)各増殖ステージまで培養した同菌から全RNAを抽出し,高濃度のアクリルアミドゲルを用いたRNA電気泳動を行う.(2)ゲルから20塩基前後のRNAを抽出した後,得られた短鎖RNAの5'末端を脱リン酸化した後,RT-PCRのプライマー会合部位となる3'アダプター配列をRNAリガーゼで結合する.(3)同様に,5'末端を脱リン酸化した後,5'アダプター配列をRNAリガーゼで結合する.(4)最後に,5'および3'アダフター配列に相補なフライマーを用いてRT-PCRを行い,クローニングベクターに組み込む. 以上の操作で得られた全クローンの塩基配列をDNAシークエンサーで決定し,ヒトmicmRNAデータベースの相同検索を行った.その結果,ヒトmicroRNA相同性を示すA群レンサ球菌の短鎖RNAを4クローン入手した.続いて,得られたA群レンサ球菌の短鎖RNAをmicroRNA発現フラスミドに組み込み,ヒト肺胞由来上皮細胞株に導入した.次年度は,これらA群レンサ球菌のmicroRNA発現フラスミドを導入したヒト細胞株の正常変化を解析する予定である.
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