Research Abstract |
前回の報告書に述べた様に,研究申請時においては,市販歯科材料resin monomer(RM)のmethyl methacrylate(MMA)を用いてレジンアレルギー(RA)をマウスに発症させることに成功したと思った.しかし,驚いたことに,その後の実験で,研究用試薬の高純度MMAを用いた場合は,RAを再現することができなかった.理由として,使用した市販歯科材料に含まれるMMA以外のなんらかの物質"が実際のアレルゲンである可能性が想定されるが,現在なおその手がかりはない.この状況の中で,"RMには他のアレルゲンによるアレルギーを促進する作用があるのではないか?"との考えを持つに至った.歯科が関連する重要なアレルゲンとして金属がある.Niを含む合金は歯科においても広く用いられており,Niによるアレルギーの頻度は最も高い.そこで,この前記の可能性を検証するため,Ni-アレルギーに対するRMのアジュバントとしての効果について検討した.前年度は,RMのひとつである2-hydroxyethyl methacrylate(HEMA)とMMAのいずれもNiアレルギーに対して促進効果(アジュバント効果)を示す結果を得た。今年度は実験をさらに繰り返して,上記結果を確認し,歯科基礎医学会で発表した.私達はマウスでのNi-アレルギーの成立が,種々の細菌成分に加え,化学物質であるbisphosphonatesによっても促進されることも見いだした(論文発表).私達が得た結果は,菌体成分のみならず,炎症性の種々の化学物質がアジュバントとして金属アレルギーを促進する可能性を示唆し,歯科関連アレルギーの大きなインパクトをもつと思われる.現在,上記RMのアジュバント効果について論文作製準備中であり,また,RMそのものを抗原とするアレルギーについても,なお検討を続けている.
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