Research Abstract |
本研究では,これまで,経験からしか学習できなかった看護技術における「熟練の技」を伝承するために,仮想現実(バーチャルリアリティ)を活用した看護技術時手指動作のリアルタイム再現による学習支援システムの構築を図ることを目的とする.そのため,本年度は,熟達した看護師の注射技術を実施する際の手指の動き,視線の動きに着目して収集したデータを用い,看護技術手順と合わせて分析を行った.その結果,注射技術においては,注射針刺入時に看護師は注視し,手指の角度や速度などの動きに特徴があることがわかった.また,手指のモーションキャプチャーシステムを使用して,採血技術実施時の注射器を把持する手指の位置データを取得し,そのデータを用いて3次元で技術の実施過程を再現できるプロトタイプシステムを開発した.モーションキャプチャーでは,15本のセンサーを手袋片手指関節に貼付して行った. 採血技術においては,注射針刺入時と注射器の内筒を引く際に看護師の技の特徴があることがわかったが,今回のプロトタイプシステムで評価実験を行ったところ,手指の動きが小さすぎて,技術実施時の明確な特徴を認識できるほどに表現することは困難であった.本研究で,手指動作の3次元のデータの取得とそれを再現できるシステムの開発まで進んだことは,採血技術実施時の手指の動きを定量化できるため,その意義は大きい.今後は,学習支援の目的と照らし合わせて「熟練の技」データの特徴化と表現方法の工夫を行う必要がある.
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