Research Abstract |
児童虐待の相談件数は,わが国においても年々増加しており,なかでも性的虐待は被虐待者に深刻な影響を及ぼしている。性的虐待では,その加害者のほとんどが顔見知りであるため,被虐待者に無力感,自責の念,自己嫌悪感,あるいはセクシュアリティの混乱を招き,さらには,ひきこもり,うつ状態,拒食・過食,自傷行為,動物や年少の子どもへの暴力行為へとエスカレートさせる危険性があることが報告されている。このような被害ならびに被害の連鎖を未然に防ぐためには,幼い頃から性に関する正しい知識を身につけ,子ども自身の自尊感情や自身で健康を守る力,および性的虐待を予防する力を育むことが重要である。本研究では,西宮市保健所の協力のもと,当該地域に在住する小学生とその保護者を対象に,児童虐待予防をめざした性教育プログラムを開発し,その有効性について検証することを目的とした。今年度は,本研究の趣旨説明に同意の得られた小学生とその保護者を対象に,開発した性教育プログラムを実施し,性教育プログラム実施前後、および実施後の児童の性に関する認識の変化について,フォローアップ調査を実施し、今後これらのデータを分析する予定である。 加えて、今年度は12歳以下の子どもをもつ母親の虐待認識に関するデータ分析も行った。本研究では、子どもを虐待しているのではないかと思うことがあるか否かを2件法で問い、その内容について調査した。その結果、対象者全体の22.6%の母親に虐待認識が認められた。虐待認識の内容は、各年齢を通じて感情的な言葉がもっとも多く、続いて叩くなどの行為があげられていた。
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