Research Abstract |
児童虐待の相談件数は,わが国においても年々増加しており,なかでも性的虐待は被虐待者に深刻な影響を及ぼしている。性的虐待では,その加害者のほとんどが顔見知りであるため,被虐待者に無力感,自責の念,自己嫌悪感,あるいはセクシュアリティの混乱を招き,さらには,ひきこもり,うつ状態,拒食・過食,自傷行為,動物や年少の子どもへの暴力行為へとエスカレートさせる危険性があることが報告されている。このような被害ならびに被害の連鎖を未然に防ぐためには,幼い頃から性に関する正しい知識を身につけ,子ども自身の自尊感情や自身で健康を守る力,および性的虐待を予防する力を育むことが重要である。本研究では,西宮市保健所の協力のもと,当該地域に在住する小学生とその保護者を対象に,児童虐待予防をめざした性教育プログラムを開発し,その有効性について検証することを目的とした。 今年度は,本研究の趣旨説明に同意の得られた小学生とその保護者を対象に,開発した性教育プログラムを実施した。性教育プログラムでは,性の基礎知識(男の子の性に関する知識,女の子の性に関する知識),排卵から受精までの過程と胎児の子宮内での成長過程,分娩に関する知識,出産時の親の想いを親から聞く体験,模擬妊婦体験に関する項目を盛り込んだプログラムである。性教育プログラム実施前,実施後,および実施6か月後の児童の性に関する認識の変化について,フォローアップ調査を実施した。その結果,性教育プログラムを実施直後では,性教育,および自分の大切さに対する児童らの思いは,プログラム実施前よりも実施後で有意に大切であるという気持ちが強くなっていた。しかしながら,6か月後に同じ調査を実施したところ有意差は認められなかった。これらのことから,性教育プログラムは,1回のみの実施ではなく,繰り返し実施する必要があることが示唆された。
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