2011 Fiscal Year Annual Research Report
定量的行動試験をもとにした顕微鏡解析による発達神経毒性の分子標的の同定
Project/Area Number |
21671002
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
掛山 正心 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (30353535)
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Keywords | 有害化学物質 / 神経科学 / 解剖学 / 行動学 / 環境政策 |
Research Abstract |
有害化学物質が引き起こす健康影響の中でも発達神経毒性は、母体が影響を受けない低用量曝露によって次世代に影響が顕れることが報告されてきた重要な課題である。本研究では、定量性・再現性の極めて高い独自の行動試験を出発点として、新たな顕微鏡解析により行動-組織-分子レベルのイベントのリンクさせることで(1)個体レベルの影響に直結した「影響の質と程度を示す」分子マーカーを見出し、(2)発達時系列をおって化学物質暴露と「こころ」の問題の因果関係を明らかにし「ネズミの行動変化がヒトの場合、どのような意味を持つのか」を科学的に説明することを目的とする。本年度は、(1)ラットにおけるスキーマ依存性学習について検討を行い、c-fos,zif286,Arcなど最初期遺伝子・蛋白の発現を組織化学的に調べ、それが前頭前野依存性学習であることを証明し論文報告した。ダイオキシン曝露により同学習機能に障害があることを明らかにし、LMD法を用いた遺伝子発現解析を開始した。(2)マウスにおいて、ダイオキシン曝露の影響は、大脳皮質-皮質下機能アンバランスにあり、これにより社会性行動異常と高次認知機能に異常を示すことを見出し論文を投稿した。(3)皮質-皮質下機能アンバランスを引き起こすダイオキシン曝露量は、既報LOAELよりもはるかに低い曝露量で認められ、化学物質影響科学として重要な課題である。そこで同曝露条件にて、前頭葉、扁桃体、海馬を中心として、LMD法等による顕微鏡解析による分子標的の同定を進めている。これまでに見出した分子のいくつかについては、ヒト遺伝子多型と行動表現型との相関解析も開始し、有意な結果を得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たな毒性影響指標として「皮質-皮質下機能アンバランス」を提唱することができた点は、当初計画以上の進展である。またヒト遺伝子多型との組み合わせにより分子標的の信頼性を高める戦略も功を奏している。一方LMD法の論文報告は少し遅れており、総合して「おおむね順調」と評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後2年間をかけて、「皮質-皮質下機能アンバランス」の影響指標としての重要性を明示するとともに、この点に着目した分子標的の同定作業に注力する。ヒト研究との比較検証は指標や分子標的の有効性を検証しアピールする上でも有効であり、継続する。
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