2012 Fiscal Year Annual Research Report
定量的行動試験をもとにした顕微鏡解析による発達神経毒性の分子標的の同定
Project/Area Number |
21671002
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
掛山 正心 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30353535)
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Project Period (FY) |
2009-05-11 – 2014-03-31
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Keywords | 有害化学物質 / 神経科学 / 解剖学 / 行動学 / 環境政策 |
Research Abstract |
有害化学物質が引き起こす健康影響の中でも発達神経毒性は、母体が影響を受けない低用量曝露によって次世代に影響が顕れることが報告されてきた重要な課題である。本研究では、定量性・再現性の極めて高い独自の行動試験を出発点として、新たな顕微鏡解析により行動―組織-分子レベルのイベントのリンクさせることで(1)個体レベルの影響に直結した「影響の質と程度を示す」分子マーカーを見出し、(2)発達時系列をおって化学物質暴露と「こころ」の問題の因果関係を明らかにし、「ネズミの行動変化がヒトの場合、どのような意味を持つのか」を科学的に説明することを目的とした。これまでに、複数の化学物質に対して前頭皮質、海馬、扁桃体の感受性が高いこと、すなわち、毒性メカニズムが異なっていても影響が顕れやすいことを見出している。そこで本年度、本研究のゴールとして提示すべき新たな毒性概念として、「皮質-皮質下機能アンバランス」を設定することとした。そしてダイオキシン曝露による皮質-皮質下機能アンバランスに関して、論文発表を行った。大脳発生過程における影響解析も進め、ダイオキシン受容体関連遺伝子の操作により大脳発生過程に異常があらわれる知見を得て、検証を進めている。同候補分子のヒトにおける遺伝子多型を調べ、ヒトにおける解析・検証も進めた。妊娠中の母体血中のPCB濃度と子どものコミュニケーション成績に相関があることを見出し、その一部は論文発表を行った。平成25年度からは長崎大学に着任し、マウスのみならずヒトにおける検証も進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
論文発表が遅れ気味であったが、本年度中心的な論文報告を数編行うことができた。 また、ヒトを用いた研究も順調に進んでおり、一編論文報告に至った。今後さらなる発展も期待できる点では、想定以上の成果である。一方、主要論文の掲載紙は当初希望どおりではないものもあったので、全体としては、おおむね順調な発展と自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年4月より、長崎大学に着任した。長崎大学は本研究においてヒトを対象とした研究を展開してきた機関であり、今回の異動は、最終年度にまとめとして、マウス実験の成果をヒトに結び付けていく展開のため、非常に好都合だといえる。 マウス実験とヒト研究を平行して進めていくことで、着実かつ先端的な研究の着地点が期待できる。
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Research Products
(9 results)