2011 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノムワイドな遺伝子ネットワーク解析による脊索動物の発生と進化のシステム的理解
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21671004
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 ゆたか 京都大学, 理学研究科, 准教授 (40314174)
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Keywords | ホヤ / 遺伝子調節ネットワーク / ゲノム |
Research Abstract |
本研究はホヤ胚を用いて発生を支配する遺伝子ネットワークを理解しようというものである。 (1)母性因子によってどのように胚性の調節因子の発現が制御され16細胞期で特定のパターンを作り出すのか、を体系的に調べている。8~16細胞期で特異的に発現を開始する16個の遺伝子のうち、5個の解析を昨年までに終えたが、今年度はさらに5個の遺伝子の解析を行った。残りの6個の遺伝子の解析を続けることで母性因子による胚性の遺伝子ネットワークの開始機構の全体像を明らか出来る予定である。 (2)昨年度までの解析で、発生の遺伝子ネットワークの中では遺伝子の発現の開始だけでなく、mRNAの寿命が広範に制御されていることが明らかになってきたので、脊索をモデルケースとして、遺伝子ネットワークにおけるmRNAの寿命制御に関する研究を行い、単一の転写因子の標的遺伝子群の中でもmRNAの寿命がそれぞれの機能に応じて広範に制御されていることを見出した。 (3)初期胚での遺伝子発現の全体像を明らかにするため、昨年度に引き続き、初期胚の単一割球を単離し、マイクロアレイで解析する実験を進めた。全体のコントロールとして全胚を用いたマイクロアレイ解析も行ったが、ホヤの母性遺伝子のうち少なくとも2000程度が個体によって異なる発現パターンを示すことがわかり、既存のデータを見直すと共に詳細なデータを取った。 (4)32細胞期の遺伝子発現パターンを体系的に説明するため、考えうるすべてのシグナルリガンドのノックダウン、ダブルノックダウンを行った。実験結果を解釈するためのモデル構築を試み、その雛形を作成することに成功した。 (5)2002年に決定したホヤゲノムは米国産個体のゲノムである。ホヤゲノムは多型が非常に多く、それが実際に解析の障害になっていたので、実際に実験に使っている集団内のゲノム多型を調べ、基礎データを補強した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ホヤ初期胚の遺伝子ネットワークを体系的に理解するための多面的アプローチがそれぞれ若干の困難はあるものの、概ね予定通り進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
おおむね、順調に研究が進んでいると考えているので、今後も予定通り、ホヤ初期胚の遺伝子ネットワークの解明に向けて、多面的なアプローチを続けていく。これまでの研究で想定外の問題は以下のとおりであるが、大きな問題とは考えていない。 ・初期胚のマイクロアレイ解析では、個体間で発現に差のある遺伝子群が予想外に多く、その影響を考えるため、当初の想定よりも多くのデータを取ることが必要となったが、時間と手間がかかるだけで、大きな問題ではない。
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