2012 Fiscal Year Annual Research Report
海外引揚問題と戦後東アジアの地域変動に関する国際的総合研究
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21672001
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Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
Principal Investigator |
加藤 聖文 国文学研究資料館, 研究部, 助教 (70353414)
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Project Period (FY) |
2009-05-11 – 2014-03-31
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Keywords | 日本近現代史 / 東アジア / 海外引揚 / 国際関係 / ソ連 / ロシア / 中国 / 朝鮮 |
Research Abstract |
研究開始から4年目にあたる2012年度は、これまでに所在が確認できている資料の収集に加えて、海外での資料調査に重点を置いた。なかでも2011年度から本格的に開始したロシア調査では、一定の前進を見ることができた。 本計画の中核となる資料調査では、国内外で積極的な調査収集を行った。まずロシアでは、ロシア外交政策公文書館においてソ連軍占領地域からの引揚に関わる文書の収集を行い、北朝鮮引揚に関する重要文書を発掘することが出来た。また国防省中央公文書館とは関東軍文書の公開について次年度以降、共同調査の基盤作りに着手することができた。この他、米国では、コロンビア大学において国民党関係者の個人文書収集を行い、イェール大学では担当者とのあいだで個人文書の整理公開に関する意見交換を行った。また、海外引揚を世界史的視野から再検討するため、アリメニア調査を行い、アルメニア虐殺記念館などでアルメニア人ジェノサイドに関する資料収集、ポーランド・ワルシャワ蜂起記念館において第二次世界大戦中の独ソ占領に関する資料調査を行った。 また、昨年度行ったスウェーデン国立公文書館で発見した引揚関係文書がNHKニュースおよびNHKBSスペシャルにおいて取り上げられた。 国内調査は、在朝日本人、とりわけ京城師範単級小学校卒業生を中心とした口述記録の収集を行い、文字化と公開の準備を進めた。また、北朝鮮引揚者に関しても調査を進めている。さらに、九州大学所蔵森田芳夫文庫の調査およびデジタル撮影と国際善隣協会所蔵『満洲国史』編纂資料のマイクロフィルムによる撮影を行った。 さらに、今年度は満洲開拓民の引揚を中心に関係書籍の収集を行い、また大阪府・奈良県・静岡県において満洲移民送出から引揚援護に関わる県庁文書・役場文書の収集を積極的に行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
口述記録収集については、朝鮮引揚者を中心に進めているが、樺太・南洋群島引揚者に対しては手薄なので、その部分の注力が必要である。 一次資料収集については、国際善隣協会所蔵「満洲国史編纂資料」のマイクロ化に取りかかっており、その他にも各地引揚関係資料(主に行政文書)と書籍の収集は大きな成果を得ている。 国際関係史研究については、スウェーデンおよびスイスでの資料調査が大きな成果を挙げており、すでにマスコミでも取り上げられた。また、アメリカでの調査もほぼ計画通りに進んでいる。さらに、研究の中心となるロシア調査は国防省中央公文書館と2000年以降日本人で初めて接触を取ることが出来、今後の計画進展に大きな転機を迎えることができた。なお、中国調査についてであるが、現地でのフィールド調査以外の資料収集に関しては、日中関係の影響により予定通りには進展していない。 比較史研究については、ロシア・韓国および米国の研究者との交流が進んでいる。また、アルメニア・ポーランドでの現地調査によってより広い世界史的視野から検討する必要性を痛感した。なお、人的交流に比べて資料収集に関してはやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
口述記録収集に関しては、今後は満洲(開拓団員)および南洋群島引揚者らを中心とした収集を計画的に実施する。また、収集した記録は順次公開の手続きを行う。 一次資料収集に関しては、引き続き全国の行政文書を中心とした引揚援護関係資料を収集する。とくに開拓団員の援護関係に重点を置く。また、書籍に関してはデータベースを構築中であり、夏期までにWEB公開を図りたい。 国際関係史研究に関しては、ロシア調査を継続させて資料発掘に努める。また、米国と中国での調査を行うと同時に、これまで収集した資料のリストとデジタルデータをWEBで公開する。 比較史研究に関しては、バルト三国での調査を実施する。また、韓国人研究者との意見交換を行い、研究の交流を図る。 これらの成果を踏まえて、最終的に研究成果の公表を図る予定である。
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