2011 Fiscal Year Annual Research Report
公衆衛生工学手法による気中分散粒子系汚染物質の人体曝露経路予測と制御
Project/Area Number |
21676005
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
伊藤 一秀 九州大学, 総合理工学研究院, 准教授 (20329220)
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Keywords | 気中分散粒子系汚染物質 / 公衆衛生工学 / 数値流体力学 / 室内空気環境 / 健康リスク / エアロゾル / 人体曝露経路 / 用量-作用関係 |
Research Abstract |
本研究は室内空気環境の新たな汚染源として着目されている気中分散粒子系汚染物質の空気力学的・化学的・微生物学的特性を厳密にモデル化し,放散源を含む非定常不均一濃度分布の予測が可能な統合モデルを構築することで人体曝露経路を解明する.さらに,疫学モデルを統合することで総合的な健康リスク評価モデルを提案するととを最終目的とする.この目標に対し本年度は以下の研究課題を遂行した. 1.気中分散粒子系汚染物質の数理モデル作成の為の基礎実験とモデルパラメータ同定 ダクト型実験模型の床面位置に各種建築材料を設置し,粒子濃度一定供給法により粒子沈着量の詳細測定を実施するすると共に,対応する数値解析を実施することでポテンシャル型沈着モデルの各種モデルパラメータ同定を実施した. 2.気中分散粒子系汚染物質の室内放散源のモデル化 高湿度となる浴室環境に着目し,バイオエアロゾルの浴室内流入モデル,沈着モデル,沈着後の増殖モデルを開発し,一連の予測手法として整理すると共に,モデル浴室空間を対象とした解析を実施した. 3.CFDと気中分散粒子系汚染物質の数理モデルを連成した予測プログラムの作成 気中分散粒子系物質の各種数理キデルをCFDへ組み込むことで、室内流れ場予測を中心とする流体シミュレーションと同時に気中分散粒径物質の非定常・不均一濃度分布予測を可能とする数値解析手法を確立した.特に建築スケールから人体内の気道スケールまでをネスティング手法により連続して予測可能な数値解析手法,更には疫学モデルを連成することで空間内での感染伝播を同時に予測する手法を確立した. 4.長期滞在型空間(住宅)を対象とした実態調査 H22年度に引き続き,福岡県内の住宅11軒を対象とした環境調査(気中分散粒子濃度の他,簡易健康診断アンケート調査)の分析を継続した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,工学的アプローチによる気中分散粒子の曝露濃度予測手法の開発・実験によるモデル定数の同定と,公衆衛生学的アプローチによる疫学モデルの開発・実験実測調査によるモデル精度の向上の2つの柱より構成されている.両アプローチともに,モデル開発と数値解析の実施は当初の計画を上回る成果が得られており,順調に進捗している.実態調査の課題では当初計画よりも対象とする住戸数が若干少なくなったものの,既往研究成果とのメタアナリシスが可能となるよう調査プロトコルを調整することで,十分な成果が得られるよう配慮した.プロジェクト全体では,概ね計画通りに研究が進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
大幅に計画を修正すべき問題点は無く,当初の計画通り研究を推進する予定である. 人体曝露経路の数値予測モデルに関しては,建築スケールから呼吸域堺ケールまでの濃度予測モデルに加え,特に口腔・鼻腔から気管支までの気道(呼吸器)モデルの開発において当初計画以上の成果が得られ始めている.当初計画の着実な推進に加えて,人体内部での曝露予測モデルの構築と実験的検証を新たな課題として追加することで,研究の更なる発展を目指す予定である.
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