2012 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ構造化糖鎖素子を介した機能糖鎖集密化バイオマテリアルの創出
Project/Area Number |
21678002
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
北岡 卓也 九州大学, 大学院・農学研究院, 准教授 (90304766)
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Project Period (FY) |
2009-05-11 – 2014-03-31
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Keywords | 糖鎖 / 酵素反応 / 自己組織化 / ハイブリッド膜 / 密度制御 / 細胞培養 / 免疫応答 / バイオインターフェース |
Research Abstract |
ナノ・バイオ研究の発展にともない、医工学分野で注目の糖鎖についても新規バイオマテリアルの開発機運が高まっている。本研究では、独自の「非水系酵素触媒反応による糖鎖合成」と「構造性糖鎖の集積造膜技術」により、細胞機能に直接働きかける糖鎖系バイオインターフェース材料の開発を行っている。最終年度前年度の本年度は、以下の重要な成果を得た。 1.有機プロトン酸アシストによる非水系酵素触媒反応の高効率化 市販のスクロース系非イオン性界面活性剤による酵素被覆と、有機スルホン酸の共触媒効果により、種々の構造性多糖類の高効率合成を達成した。安価に入手可能な界面活性剤を利用できるようになり、本手法の汎用性が飛躍的に高まった。 2.糖鎖ハイブリッド集積界面の設計と生体応答制御 【細胞機能】ガラクトシルラクトースとセロビオースのハイブリッド膜を開発し、レクチンの糖鎖認識能、HepG2細胞の接着性とその肝機能(解毒酵素活性)が、膜の糖鎖配合に強く影響を受けることが判明した。 【免疫応答】キトオリゴ糖集積膜の糖鎖密度依存的なHEK293細胞の炎症反応が、TLR2レセプターを介した免疫応答であることを明らかにした。糖鎖固定により単位糖鎖モル量あたりの応答性が100倍以上増幅する糖鎖クラスター効果の発現を確認した。 【細胞配列】筋芽細胞C2Cl2を様々なレール幅のマイクロパターン上で培養したところ、キトオリゴ糖の集積固定により、筋芽細胞の特異的な接着挙動とレールに沿った細胞配列が観察された。 3.逆ミセルを反応場とする糖鎖修飾金ナノ粒子の精密合成 イソオクタンを油相にNMMO水溶液を水相としてAOTで安定化させた逆ミセル内部で金ナノ粒子の合成を行ったところ直径7nmの単分散粒子が得られ、オリゴ糖鎖のハイブリッド修飾でも均一粒径が達成された。糖鎖配合比依存的なレクチン相互作用を凝集・分散にともなう色変化で判別できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は独自の「非水系酵素触媒反応」と「構造性糖鎖集積技術」からなる。界面活性剤の合成は非水系酵素反応の律速プロセスであったが、食用乳化剤が利用可能となったことで、本技術の汎用性が飛躍的に高まった。糖鎖集積界面のバリエーションも広がり、様々な細胞の生理応答を研究できる体制が整った。本研究の最終目標である、マテリアル界面で細胞動態を制御する「グライコナノアーキテクトニクス研究」の基盤構築に向け、大きく進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は上記の独自技術の深化と融合による新材料創出を柱としている。5年の研究期間の4年が経過し、それぞれの技術は大きく進歩した。扱う生理活性糖鎖の種類やナノ構造とマイクロパターンの組み合わせなど、バリエーションは増えているものの、構造性糖鎖を「ナノ構造化素子」として機能利用する研究は、進展が一定レベルに留まっている。本年度の成果として、糖鎖クラスター構造が直接関与するバイオアッセイ系を構築できたことから、今後の推進方策としては、マテリアルと細胞の界面で起こる生体応答の検出と制御に焦点を絞り、当初予定の「グライコナノアーキテクトニクス研究」の基盤構築を目指す。
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Research Products
(16 results)