2010 Fiscal Year Annual Research Report
ペタスケールシミュレーションのための高性能な並列線形ソルバ
Project/Area Number |
21680003
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岩下 武史 京都大学, 学術情報メディアセンター, 准教授 (30324685)
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Keywords | ハイパフォーマンス・コンピューティング / 計算機システム / シミュレーション工学 / 応用数学 / 線形反復法 / マルチグリッド法 / 有限要素法 / 数値解析 |
Research Abstract |
平成22年度には、平成21年度に開発した陰的マルチグリッド化プログラムに基づいて、様々な数値シミュレーションで生ずる連立一次方程式に対して陰的マルチグリッド法を適用し、これにより得られる拡大係数行列を持つ連立一次方程式に対して既存の反復法ライブラリを適用することで、従来の前処理付き反復法の枠組みでは実現できない形式をもつ反復解法の実現とその性能評価を行った。数値実験には研究代表者らが開発した有限要素電磁場解析やフロリダ大学Matrix Collectionデータベースより取得した連立一次方程式を用い、陰的マルチグリッド化後の拡大方程式に対して、定常反復法前処理・ILU分解系前処理を用いた共役勾配法、GMRES法、BiCG-STAB法等の反復法を適用した。本研究により、陰的マルチグリッド法と既存ライブラリの組み合わせることで簡便に多様なマルチグリッド型反復解法の適用が可能であることが確認された。また、解析結果から、拡大係数行列に対する前処理では、対角ブロック部の収束性への影響が大きく、非対角ブロック部については大きな影響を与えないことが見出された。本結果は、並列処理に適合性のある加法シュワルツ型の前処理が拡大方程式に対して有効に機能する可能性を示唆しており、重要な知見と言える。一方、平成22年度中の研究において、既存の反復解法ライブラリは、陰的マルチグリッド法により生ずる冗長な未知変数をもつ連立一次方程式に対するサポートが不十分であることが分かった。そこで、平成23年度には、これらの冗長な未知変数をもつ連立一次方程式に対応する線形反復法プログラムを開発し、その並列化についても取り組む予定である。
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