2011 Fiscal Year Annual Research Report
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21680023
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
梶本 裕之 電気通信大学, 情報理工学研究科, 准教授 (80361541)
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Keywords | 触覚 / 情動 / モデル化 / 電気刺激 / インタフェース |
Research Abstract |
本研究は、情動を引き起こす触覚体験の単位要素の同定、情動を引き起こす触覚体験に必要な触覚ディスプレイの設計論構築、および情動を引き起こす触覚体験の低次-高次モデルの構築を行うものである。 第三年度であるH23年度は、昨年度提案した「耳への振動提示による情動増幅」を多くの音源に対して適用し、さらに「体毛を立毛させることによる驚き感覚の増幅」、「擬似的な心拍の提示による親近感の増幅」を提案、評価した。 耳への振動提示についてはH22年度、聴覚的刺激の低周波成分を触覚的に耳介に提示することで情動の変化が生じることが確認された。H23年度は情動変化のコンテンツごとの影響を評価し、その結果、もともとコンテンツに含まれていた情動的要素が特に顕著に増幅されることがわかった。 体毛を立毛させることによる驚き感覚の増幅は、サイレンによる驚き状況の提示と同時に前腕部に高電圧を加えて立毛させることによって行った。心理評価、および皮膚コンダクタンス反応(SCR)を観察した結果、立毛によって驚き感情が有意に増加していることが明らかとなった。立毛単独では驚きは生じないことから、ヒトは驚き状況の提示と同時に立毛という自己の生理反応を提示されることで自己の内部状態を調整したと解釈できる。 擬似的な心拍の提示による親近感の増幅は、好意をもたらすであろう写真(異性のポートレイト)をランダムに提示した際に心拍の上昇または下降を胸部に振動として提示し、それによって写真への評価値が変化するかどうかを見た。その結果、心拍の上昇によって好意が上昇すること、また元々特に好意を持たない(好みでない)写真については違和感を持ち、むしろ不快となることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、情動を引き起こす触覚体験の単位要素の同定、情動を引き起こす触覚体験に必要な触覚ディスプレイの設計論構築、および情動を引き起こす触覚体験の低次-高次モデルの構築を行うものである。現在までに、情動を引き起こす触覚体験の単位要素として、高い臨場感という外的要因と自己の生理反応の提示という内的要因を導き出し、また実際の体験装置を作って効果を検証した。モデルの構築に関しては数学的モデルを立てるには至っていない。以上からおおむね順調と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度は、これまでに提案してきた触覚による情動誘発をもとに、具体的な応用提案、評価を行う。具体的には23年度までに提案した「耳への振動提示」、「体毛を立毛させることによる驚き感覚の増幅」、「擬似的な心拍の提示による親近感の増幅」についての応用提案及び評価を行う。評価は主に情動に伴う生理反応の定量的分析によって行う。 耳への振動提示については、これまでの研究で多くの聴覚的刺激の低周波成分を触覚的に耳介に提示することで臨場感が高まることが確認されてきた。しかし音成分の低周波領域のみを切り出すべきか、幅広い音の周波数成分を触覚知覚可能な領域に圧縮すべきかといった具体的なアルゴリズムは不明である。本年は応用上重要なこのアルゴリズムを確立する。 体毛の立毛については、これまでの研究で前腕の立毛によって驚き感覚が増幅されることは確認されてきた。本年は特に映画館での視聴時の体験の増強を目的に、椅子型デバイスを用いた全身への提示実験を行う。 擬似心拍の提示については、これまでの研究で好意をもたらす傾向の高い映像の提示にともなって自己の心拍を上昇させると好意が上昇することがわかっている。これをコミュニケーション用途に用いるため、ソファや携帯電話などの日用品への内蔵を行う。 以上の実験により、触覚による情動増幅の2つのシナリオ、すなわち臨場感(リアリティ)を増幅することによる情動増幅と、自己の生理反応を増幅提示することによる錯覚を用いた情動増幅の2つの効果を、それぞれ日常で利用可能な形で示すことができると考えられる。
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Research Products
(18 results)