2009 Fiscal Year Annual Research Report
アンドロゲン依存性気分障害と雄性性機能制御の分子・神経メカニズム相関の解明
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21680031
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
坂本 浩隆 Okayama University, 大学院・自然科学研究科, 准教授 (20363971)
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Keywords | アンドロゲン / 雄性性機能 / 気分障害 / 脊髄 / 脳 / 神経解剖 / ガストリン放出ペプチド / 性的二型核 |
Research Abstract |
ラット球海綿体筋を支配する球海綿体脊髄核(SNB)は、腰髄(L5-L6)に存在し、雄優位の性的二型核を示す運動ニューロン群であり、雄の性行動に重要な役割を果たす。また、血中アンドロゲン濃度の減少がSNBニューロンの樹状突起を萎縮させること、また、その樹状突起上のシナプス密度をも減少させることが報告されているが、これらのシナプス入力の神経化学的特性の同定は未だなされていなかった。最近我々は、神経ペプチドの一種、ガストリン放出ペプチド(GRP)の発現が雌に比べ、雄ラットの腰髄に有意に高いことを新規に見出した。また、この腰髄に存在するGRP系は脊髄内に神経ネットワークを構築し、自律神経系を制御することにより、雄の性機能を調節していることも明らかにした。さらに、この脊髄GRP系もアンドロゲンの影響を強く受けており、SNBニューロンの樹状突起やシナプス入力変化と関連がある可能性が示唆される。しかし、方法論的な困難から、脊髄GRP系からSNBニューロンへの直接的なシナプス入力についての報告は未だ成さられていなかった。今回、GRP免疫組織化学法とSNBニューロンの逆行性標識法とを組み合わせることにより、超微形態学的にSNBニューロンの樹状突起上にGRP作動性のシナプス入力が存在するかを、超高圧電子顕微鏡を用いて解析した。コレラトキシンβサブユニットにより逆行性標識されたSNBニューロンをテトラメチルベンジジン法で、また、GRP免疫組織化学法を従来のジアミノベンジジン法で、それぞれを可視化し、超高圧電子顕微鏡下で2者を区別することに成功した。その結果、SNBニューロンの樹状突起上にGRPを含む多くのシナプスが存在していることが明らかになった。球海綿体筋の収縮は勃起や射精に深く関与しており、SNBへの求心性GRPシナプス入力を介して性行動を制御している可能性が高い。現在、これらの脊髄に存在する性機能中枢と、脳との神経連絡について詳細な解析を進めている。
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