2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21680035
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 幸治 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特任助教 (20444101)
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Keywords | 嗅覚 / イオンチャネル / 受容体 / 感覚生理学 |
Research Abstract |
動物は、外界に存在する化学物質を認識するために、嗅覚器や味覚器を発達させてきた。これらの器官に分布する受容体は様々なリガンドにより活性化される。しかし昆虫の匂い活性型イオンチャネルは匂いに対して活性化、不活性化双方の反応を示し、本研究ではその抑制機構の解明を目指す。まず実施計画に基づき、チャネル機能や抑制性応答を示す新たな受容体とそのリガンドの探索を行ったところ、線虫からフェロモンに対して抑制性応答を示す受容体を、哺乳類からアディポネクチンに対する受容体を見出した。前者は昆虫とは異なりイオンチャネルの機能は有しないが、そのような受容体における初めての抑制性匂い応答の発見である。さらに探索を行った結果、糖により活性化される味覚受容体をカイコガの遺伝子より発見した。この受容体に対し網羅的なリガンド探索実験を行った結果、果糖が活性化物質として同定できた。そこで実施計画3により薬理学的に受容体機能解析を行った結果、この受容体もイオンチャネルの活性を有することが示唆された。次に実施計画2に従って、匂い活性型イオンチャネルにおける抑制性物質と受容体の結合部位を検討したところ、興奮性の物質と共通の受容体部位で抑制異性物質と結合することがわかった。さらに活性化時、不活性化時でチャネルを透過するイオンについて検討したところ、不活性化時では特定のイオンの透過性が影響を受けるのでなく、全体の活性が低下していることがわかった。つまり匂い活性型イオンチャネルでは、抑制性物質が興奮性物質と受容体の結合を阻害することで、興奮性応答を発生させない機構を有することが明らかとなった。このように様々な物質により活性、不活性化の双方が調節されるイオンチャネルは未だ報告がない。また嗅覚、味覚双方で受容体型イオンチャネルが関わっていることから、引き続き本研究により末梢におけるリガンド制御型イオンチャネルの制御機構が明らかになると期待される。
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Research Products
(6 results)