2010 Fiscal Year Annual Research Report
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21680039
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
出口 真次 東北大学, 大学院・医工学研究科, 准教授 (30379713)
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Keywords | 生体医工学 / メカノバイオロジー / 生物物理 / 細胞骨格 / メカノコントローラー / メカノセンサー / ストレスファイバー / 非筋II型ミオシン |
Research Abstract |
細胞は自らが受けた「力」をいつまで(何が満たされるまで)生化学量に変換し続けるか(力覚応答を続けるか)はこれまで説明されてこなかった。これを説明するための「力」のホメオスタシスの分子メカニズムを、ストレスファイバの動的力学構造を調べた実験結果をもとに提案した。細胞の足場に相当する接着斑に存在する構造タンパク質群は、力の負荷に応じて他分子との結合親和性を変える。しかしこれは「力」と「生化学量」をおよそ線形的に変換する要素としてしか働けない。ところが非筋II型ミオシンを含んだ構造をもつストレスファイバには自由エネルギーを最小にする分子ひずみが存在することを実験的計測に明らかにした。外部からの力学刺激によってこの分子ひずみに変動が生じても、ミオシンのMgATPaseが保たれている限り、動的な移動によって元の特異な分子ひずみに戻される。このMgATPaseを制御するRhoAGEFは、ストレスファイバの端部にある接着斑に張力が作用する限り活性化される。従って、外力が作用してもネガティブフィードバックが働いて張力が一定に保たれる。このことから、接着斑由来シグナルの下流にある細胞周期調節シグナルなどの活性量にも力に依存したホメオスタシスが生まれると考えられる。つまり細胞に対して外力が負荷されても数十分の時間オーダーで擾乱を打ち消す作用が非筋II型ミオシンの働きをもとに起こり、その結果、接着斑下流のシグナル活性量が維持されるという重要な機構の存在を明らかにすることができた。
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