2011 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト腱の力学的および代謝的因子の変化に基づいた運動プログラムの開発と応用
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21680047
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久保 啓太郎 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (70323459)
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Keywords | 血液循環 / ヒト生体 / アキレス腱 |
Research Abstract |
温熱療法や鍼治療は、腱や靭帯などの軟部組織の障害の治療に効果が高いことが知られているが、その機序については不明である。そこで本研究では、これらの刺激による血液循環変化の機序を探るために、温熱および鍼刺激による刺激脚および非刺激脚のアキレス腱のTHbおよびStO2を測定した。11名の被検者を対象に、刺激前15分間、刺激中および刺激後40分間、赤色分光法により刺激脚および非刺激脚のアキレス腱のTHbおよびStO2を連続的に測定した。温熱刺激は、赤外線治療器(HIR-225,OMRON)を用いて、アキレス腱から約30cm離れた位置から20分間照射した。鍼刺激は、5分間の置鍼(皮膚上から約3mmの深度で鍼を挿入する)、3分間の雀啄(鍼を上下に動かす)、2分間の置鍼の合計10分間とした。各被検者で両刺激の順番はランダムとし、両実験の間の間隔は2週間とした。刺激脚については我々の先行研究(Kubo et al. 2010 Eur J Appl Physiol)と同様に、両刺激ともに刺激中にTHbおよびStO2が増加し、刺激後において温熱刺激では減少するが鍼刺激では維持されていた。一方、非刺激脚のTHbは、温熱および鍼刺激ともに刺激中は変化がみられないが、両刺激後に徐々に増加し後半は安静時より有創に高くなった。さらに鍼刺激においては、両脚における腱THb増加量の間の相関係数は時間経過とともに高くなり、刺激修了後30分後から有意な相関がみられた。温熱刺激による腱の血液循環変化には末梢性の関与が大きく、鍼刺激において刺激(特に雀啄)中は末梢性、刺激後は中枢性の関与が大きいことが示唆された。さらに、温熱刺激および鍼刺激により、腱内の血液量および酸素飽和度が高く保たれ、そのことが両刺激により腱障害の治療に貢献している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スポーツ現場における運動プログラムの実践において、障害に対する処置は重要なものである。今年度の研究では、現場において経験に基づいて行われている治療法(温熱療法、鍼治療)の科学的エビデンスをしめすことができたことは、本課題の中で大きな意味を持つと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで実験室レベルでのトレーニング(運動プログラム)に伴う、ヒト生体における腱の力学的(ステイッフネスなど)および代謝的因子(血液循環、コラーゲン代謝など)の変化を明らかにしてきた。今後は、より実際の現場で行われている様式に近い条件での知見を集め、応用を試みる必要がある。
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