2011 Fiscal Year Annual Research Report
食品因子イソチオシアネートの生物化学的特徴を利用した機能性発現機構解析
Project/Area Number |
21680052
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
三好 規之 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助教 (70438191)
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Keywords | 機能性食品 / がん細胞増殖抑制 / 質量分析 |
Research Abstract |
キャベツやブロッコリーなどアブラナ科植物などに豊富に含まれている含硫化合物であるイソチオシアネート類(ITCs)は、動物実験や疫学研究の結果などからも、最も重要度の高いがん予防食品因子の一つであると考えられている。本研究は分析化学的手法(質量分析)とITCsの生物化学的特徴を考慮した統計学的手法(多変量解析)を組み合わせることにより、生体内におけるITCsの標的タンパク質、さらにその標的アミノ酸を網羅的に同定し、多様なITCsの生理活性(解毒酵素誘導や細胞周期停止活性、アポトーシス誘導活性など)発現メカニズムの解明を目的に解析を行った。 昨年度までに抗ITCs特異的抗体や化合物のプローブ化(ビオチン化やRI標識など)を必要とせず、インタクトなITCsを用いたアッセイで結合タンパク質を網羅的に同定する分析法を開発した。分析法の原理は、ITCsのうちbenzyl ITC(BITC)とphenethyl ITC(PEITC)はNCS基とベンゼン環をつなぐアルキル鎖の長さが"1"異なる分子であるため、BITCおよびPEITCのタンパク質付加体の質量分析をそれぞれ行うと、質量数に14.01565の差が生じる(ITCs1分子付加で価数が1の場合)。この規則性を目印にするとペプチドの一斉分析により、ITCs結合タンパク質を網羅的に同定することができる。 本年度は更なる分析精度・感度の向上を目指して検討を行った、まずTOF/MS分析によって得られたMSイオンピークリストの統計解析の際に、Bonferonni法でFamily-wise ErrorRateを調整した多重検定補正(multiple testing correction)を行うことによって、false positive errorとして673イオンピークをITCs結合候補から排除することができ、分析精度を向上させることに成功した。また、タンパク質中Cys残基のSH基へのITCs付加反応(S-thiocarbamoylation)によって生成するITCs付加体は、中性溶液中では不安定であるため、消化酵素処理条件を検討し、弱酸性条件で行うことにより、より安定なサンプル調製条件下でITCs付加体を感度よく検出できることが確認された。 また本分析法を、ITCs曝露した細胞(ヒト大腸がんHCTIl6細胞)抽出液の分析へ応用すると、昨年までにITCsの標的分子として同定していたグルタチオンとmicrophage migration inhibitory factorにくわえて、細胞内の遊離アミノ酸であるCysやLysへの付加反応物が新規に同定することに成功した。
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