2010 Fiscal Year Annual Research Report
医科学研究の倫理的社会的法的課題への対応活動に関する評価と理論構築に関する研究
Project/Area Number |
21680055
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
武藤 香織 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (50345766)
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Keywords | ELSI / 社会学 / 評価 / 研究倫理 / 科学技術政策 |
Research Abstract |
今年度(2年目)は、調査対象を絞る作業を行い、国内外の研究実施体制を中心に詳しい調査を実施した。具体的には、国内の主要な研究プロジェクトである、ながはまコホート、JPHCスタディ、オーダーメイド医療実現化プロジェクト、エコチル調査等の事務局やリクルート先を訪問し、ELSI面での課題や活動内容に関するヒアリングを実施した。その結果としては、ELSI活動の一環として、助言・諮問委員会の設置、広報紙の作成・配布、成果還元のための講演会、市民団体との連携による研究参加の促進活動、参加者への意識調査等が行われていることがわかった。また、各機関の倫理審査委員会およびプロジェクトで設けた倫理面に関する助言・諮問委員会と、研究者側との関係については、どのプロジェクトでも課題が認識されていた。なお、UKバイオバンクのELSI面の対応について、責任者へのヒアリングと公表されている文書の分析を行ったところ、UKバイオバンクでは、外部評価により、研究実施責任者との信頼関係の再構築するよう指示があったことから、議事録の残る公式な会合の他に、クローズドな会合を持つことによって、不必要な緊張感のない協議の場を設ける等の対応が取られたとのことであった。以上の調査結果から、ELSI面の活動としては、広報、モニタリング、助言・諮問などが中心であり、中長期的な観点になった検討は十分なされていないこと下も確認できた。これは、国内の研究プロジェクトの場合、予算的な制約や委託業務項目との関連で、十分な検討に及べないことが原因であると推定される。他方、助言・諮問組織の役割や関係性は必ずしも定式化されていなかった。
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