2011 Fiscal Year Annual Research Report
X線マイクロビームを用いたクラスターDNA損傷による生物効果の解明
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21681006
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Research Institution | Central Research Institute of Electric Power Industry |
Principal Investigator |
冨田 雅典 (財)電力中央研究所, 原子力技術研究所, 主任研究員 (00360595)
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Keywords | クラスターDNA損傷 / マイクロビーム / X線 / 放射線影響 / バイスタンダー応答 |
Research Abstract |
本年度は、X線飛跡端で生じるクラスターDNA損傷の重篤度とその生物効果について解析を行った。従来のマイクロビームX線照射システムでは、アルミニウムK殻特性X線(1.49keV)を用いており、垂直方向に細胞数個を貫通する飛跡長があった。本研究を行うにあたり、飛跡長が短く、X線マイクロビームが1細胞核内に吸収される炭素K殻特性X線(278eV)を用いるため、照射システムのマルチターゲット化を行い、炭素特性X線用に新たな集光光学系を構築した。 構築した集光光学系をマイクロビームX線照射システムに実装し、炭素特性X線を発生させた。しかしながら、ビーム強度が非常に弱く、検出器のノイズの影響を受けるため、線量測定は極めて困難であった。そのため、HeLa細胞の細胞核への標的照射を行い、DNA2重鎖切断修復タンパク質(53BP1、γ-H2AX)の照射部位への集積を蛍光抗体法によって観察し、マイクロビームの形成と照射を確認した。 炭素特性X線を、一定時間細胞に照射することにより、各種DNA2重鎖切断修復タンパク質が集積することを、共焦点レーザー顕微鏡を用いた蛍光観察によって確認した。その結果、アルミニウム特性X線を照射した場合と比較して、集積したDNA修復タンパク質のスポットの大きさや消失に要する時間などに大きな違いは認められなかった。 さらにアルミニウム特性X線を用い、飛跡の影響を見るために照射用ディッシュの底面に利用しているポリプロピレンフィルムの厚みを変えて照射し、DNA修復タンパク質の集積を解析した。その結果予想に反し、薄いフィルムを用いた方が、集積したDNA修復タンパク質のスポットの消失が遅延した。 以上の結果から、2次電子の飛跡端において線量以上に生物効果が高められることはなく、むしろ細胞核内の照射領域の大きさに依存することが示唆された。
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Research Products
(5 results)