Research Abstract |
本研究では,イオン液体の電気化学挙動の基礎的観点からカチオン,アニオン種の吸着現象の理解,イオン液体が持つ広い電位窓を利用したナノ構造体形成について探索・解明することを目指し,より高レベルな脱水環境を達成するために気密性の高いグローブボックスと脱水・脱酸素を促進するガス循環精製装置を導入するために装置の改良,接続部品の増設に投資を行い,特に平成23年度はプローブ顕微鏡の測定環境の整備に努めた。東日本大震災の影響でプローブ顕微鏡とグローブボックスの接続部品の供給が大幅に遅れたために期間内に動作確認するに至らなかったが,昨年度までに導入した電気化学測定用のグローブボックスを用いて脱水環境下で種々のイオン液体の厳密な電気化学測定を行い,単結晶電極上へ吸着したフラーレン薄膜の電気化学反応を種々のカチオン種のイオン液体中にて電位窓,電子移動速度の観点から調査を進めた。その結果,サイクリックボルタモグラム,および微分パルスボルタモグラム中でフラーレン薄膜の4~6電子反応が観測された。室温でフラーレンの6電子移動反応が観測されたばかりではなく,その電子移動速度はイオン液体のカチオンの種類により異なることが明らかとなった。これらの結果は,電位窓よりもイオン液体のカチオンに起因した粘度あるいは導電性に強く依存することを強く示唆している。一方,電気化学STMのパフォーマンスを示す実験として,水溶液中でのフラーレンとフタロシアニンのハイブリッド分子の単分子膜の観察を進め,その分子レベル解像,孤立化1分子の可視化に成功した。さらに芳香族炭化水素単分子膜を利用した白金ナノクラスターの作製にも取り組み,芳香族炭化水素の分子量,あるいは化学構造によって白金錯体の電析量,クラスターサイズ,分散性の制御が可能であることが見いだされた。
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