2010 Fiscal Year Annual Research Report
赤外分光法と原子間力顕微鏡の融合による液中での単一分子観察・同定技術の開発
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21681018
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
福間 剛士 金沢大学, フロンティアサイエンス機構, 特任准教授 (90452094)
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Keywords | 原子間力顕微鏡 / 赤外分光 / 生体分子 / 分子識別・同定 / 1分子計測 |
Research Abstract |
本研究で開発する手法は、赤外光を試料に照射することで分子振動を励起し、それを分子スケールの分解能をもった原子間力顕微鏡(AFM)により検出することを基本原理としている。これを実現するために、昨年度までに、セラミック光源とフィルタを組み合わせて、選択的に特定波長の赤外光を照射できる赤外照射システムを開発した。さらに、赤外用の反射型対物鏡を組み込んだAFM装置を設計・製作した。この際、試料の下に作動距離の短い反射型対物鏡を設置して、試料へと赤外光を照射するために、非常に薄く(厚さ:4mm程度)、中空構造を持ったスキャナを新たに設計・開発した。 今年度は、昨年度開発した薄型中空スキャナを改良し、それを駆動するための専用高圧アンプを開発した。これらと昨年度開発したAFM装置を組み合わせて液中原子分解能観察が可能であることを確認した。さらに、このAFM装置と昨年度製作した赤外光源を組み合わせて、赤外照射下でのAFM観察を可能とした。これまでの実験で、高分子薄膜のAFM観察中に赤外光を照射し始めると、薄膜の熱膨張により、膜厚が大きく変化する様子がAFMで確認されている。現在、吸収波長の大きく異なる2種類のモノマー分子から成るブロック共重合体の相分離膜を作製する条件出しを進めている。今後は、これに赤外光を照射して、赤外吸収の違いをAFMで検出し、局所的な分子識別を目指す。 また、これらの研究開発と並行して、上記のAFM装置と組み合わせるための赤外分光器の設計を進めてきた。これをフィルタの代わりに用いることで、より高い分解能で赤外光の波長を選択できるほか、連続的に波長をスイープして、赤外吸収スペクトルを計測することも可能となる。今後は、この分光器を組み込んだAFM装置を実用化し、局所的な赤外吸収スペクトルの計測や分子識別を目指す。
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