2011 Fiscal Year Annual Research Report
心血管細胞を用いたマイクロティッシュデバイスの開発
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21681019
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
田中 陽 独立行政法人理化学研究所, 集積バイオデバイス研究ユニット, ユニットリーダー (40532271)
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Keywords | マイクロ・ナノデバイス / 細胞・組織 / 再生医学 / 生体機能利用 / 生物・生体工学 |
Research Abstract |
近年、分析・合成反応など様々な化学プロセスを集積化する研究が多く報告されているが、さらに飛躍的な高効率化のためには、ポンプなどの流体駆動デバイスを集積化する必要がある。しかし、流体駆動デバイスは通常電力を用いるため、現在の技術では集積度に限界がある。一方、本研究代表者は生体の細胞は化学的・力学的機能が高度に集約化された素子であり、生体内で高度な流体駆動・制御を実現していることから、これを利用することで飛躍的に集積度の高いマイクロ流体駆動デバイスを実現できると着想した。そこで、本研究の目的はマイクロ構造体と細胞・組織の機能を融合したバイオマイクロデバイスの創成とする。細胞は、心筋細胞および流量センシング機能をもつ血管内皮細胞・流量制御機能をもつ血管平滑筋細胞をはじめ、様々な細胞を用いる。 昨年度までは、これまでに開発した心筋細胞で駆動するポンプの改良と、単一細胞での機能デバイスを目指し、マイクロチャネル内での単一細胞パターニング・培養法を確立した。本年度はさらに、血管細胞の生育条件のチャネル形状依存性を調査し、チャネル曲率が高くなれば細胞の生育を阻害することがわかり、高機能血管デバイス設計の礎石を築いたとともに、腎臓の細胞の化学物質分離機能に着目した新原理の分離デバイス開発を進め、ポア膜を挟み込んだチップの作製とこれによる細胞分泌物の分離を実証し、デバイスの原理を検証した。以上より、当初計画に記載の心筋・血管デバイスは順調に結果が得られ、デバイス開発に伴う新しい知見も得られており、それだけにとどまらず得られた方法論や知見を他の細胞を用いたデバイスへも展開しており、申請当時の計画に比べ、相当先に進んでいるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画であった心筋・血管細胞を用いた新原理デバイスの開発・改良のみならず、これから細胞生育の表面形状に対する依存性など新たな知見が得られたうえ、腎臓細胞の生体分子分離機能を利用したマイクロチップ内分子分離デバイスという、他の細胞を用いた新原理のデバイスにまで発展させることに成功し、単発研究ではなく、ひとつの新たな分野を開拓できつつあるため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針として、当所の計画通り心筋・血管細胞デバイスの開発と性能向上を目指すとともに、そのアプリケーションを模索し、再生医学やエネルギーデバイスへの実際の応用へと繋げていくこと、また、心筋・血管細胞および計画書にはなかったが、新たに始めた腎臓細胞以外の細胞も積極的に利用し、分野としての裾野を拡げていくことを同時並行で進めていく。この際に問題となるのは、新たな細胞を用いる際に、細胞の性質をどの程度理解してデバイスを設計作製していくかという点であるが、細胞理解よりもデバイス工学としての可能性を拡げることに重点を置き、必要に応じて専門家との共同研究も視野に入れて研究を推進する。
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Research Products
(16 results)