2011 Fiscal Year Annual Research Report
石製装身具の石材分析からみた縄文社会の地域間交流と農耕化への変遷過程の研究
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21682004
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
大坪 志子 熊本大学, 埋蔵文化財調査センター, 助教 (90304980)
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Keywords | クロム白雲母 / 縄文時代後晩期 / 穿孔技術 |
Research Abstract |
九州地方縄文時代後期後葉から晩期前半にかけて盛行した勾玉・管玉・小玉を基本セットとする石製装身具の石材は、悉皆調査の結果翡翠ではなくほとんどがクロム白雲であったことが判明しており、産地は九州脊梁と推定される。この九州産玉類が、後期末から晩期初頭に東日本へ伝播した実態を具体的に検証するため、本年度は東海地方(愛知県)・四国地方(愛媛県・徳島県・高知県)・京都府・滋賀県・山口県・鹿児島県・埼玉県において該当資料と予想されるものについて、現地での蛍光X線分析による調査を行った。大きな成果の一つは、四国において、瀬戸内地域および太平洋側のおいてそれぞれクロム白雲母製品が確認されたことである。和歌山・三重県沿岸で、昨年度確認した資料と九棚を結ぶルートが2通りあることが確認された。関連があるものとしては、瀬戸内海をはさんで対面する山口県瀬戸内海沿岸でもクロム白雲母製品が確認できたことである。九州からの搬出地域も、福岡・大分県沿岸地域と、宮崎・鹿児島県地域の二地域を想定しておくべきであろう。もう一つの大きな成果は、日本海側の京都府・滋賀県においても資料が確認されたことである。日本海側において中国地域山間部と能登半島地域との間をつなぐ資料の発見である。膨大な資料のなかで調査対象を決定する際には、以前から提示している九州産石製装身具の独特な形態と穿孔方法を基準といして、格報告書の図面から判断しており、この基準は新たに広げた調査地域においても概ね適応できることが実証された。 韓国においても調査を実施し、同国では2例目となるクロム白雲母製品を確認した。時期の精査・検討を再度行う必要があるが、日本でのクロム白雲母の盛行が終わり、半島製の装身具が搬入され始める時期に、九州島から搬出されたと考えられる。これは、九州内において、クロム白雲母製品が地理的に近く支石墓など半島文化を縄文時代末期に受け入れた地域に残る現象との関連が推定される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多くの資料の中から、自己の提示した基準に拠り調査対象を決定して調査を遂行している結果、高い確率で本州におけるクロム白雲母製晶の発見成果を修めている。資料の帰属時期も想定どおりである。ただし、こうした九州産石製装身具の動態の背景に関する考察が、未だ不充分である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、未だ調査を行っていたない、東海地方の残り、装身具の出土例が多い中部地方・北陸地方の現地調査を引き続き行う。中部地方・北陸地方は、縄文時代石製装身具の石材を代表するヒスイ産地を擁する地域であり、東のヒスイ文化と西にクロム白雲母文化の交錯地域である。当該地域での実態調査は、なぜ本州の縄文人がクロム白雲母製品を欲したかなど、流通の実態やその背景を探る端緒が得られると考える。また、九州の縄文人とは色彩の面で異なると思われる東北地方・北海道地域での装身具の調査を可能であれば行いたい。
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Research Products
(4 results)