2011 Fiscal Year Annual Research Report
サステイナビリティ・イノベーション創出の国際比較分析
Project/Area Number |
21683003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鎗目 雅 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 准教授 (30343106)
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Keywords | サステイナビリティ / イノベーション / 企業戦略 / 公共政策 / 制度設計 / 知識 / ネットワーク / 共進化 |
Research Abstract |
これまで産学官連携の機能として重要だったのは、主として産業化を視野に入れた技術開発に対する協力であり貢献であった。しかし近年は、顕在化しつつあるさまざまな社会的課題に対しても、産学官はイノベーションに向けた新しい役割を果たすことが要請されている。特に、地球レベルでのサステイナビリティの追求には、世界的規模の広範な視点からの議論が必要となり、社会における具体的な問題の原因は極めて複合的である,一方、大学が専門とする科学技術において知識の高度化と専門化が急速に進み、単独の研究者による社会的課題の解決能力に限界がみえている。このような状況下、大学が社会的課題の解決に関して積極的にアジェンダを発信し、民間企業の参加を積極的に募り、公的機関や非営利組織(NPO)と広く連携して、共同で問題の解決に向けた技術の開発と普及を自指す方向性が生まれてきている。通常の技術開発に関する産学官連携においては、競争力のある技術の開発に向けて産学官の利害が一致し易く、関連する制度の形成にあたっても産学官のネットワークが円滑に機能する。対照的に、環境保全や社会の安全確保など外部性が高い課題に関しては、民間セクターと公的セクターの利益が必ずしも一致せず、従来からの産学官連携が必ずしも有効に機能しない可能性がある。特に地球レベルにおけるサステイナビリティなど、ステーク・ホルダー間の利害を調整することが容易ではない社会的課題において、研究開発ネットワークにおける知識と中立性を通じて、産学官連携は技術変化の方向性と速度に大きな影響を与えることが可能である。産学官が共同でプラットフォームを形成し、関連するステーク・ホルダーを早い段階から巻き込むことによって、社会的課題に関する多様な視点や立場を理解し取り入れることが可能になる。その上で、新たな技術やシステムをステーク・ホルダーと共同で実際の条件において社会実験を行うことを通じて、社会レベルでのイノベーションを創出していくことが重要となってくる。研究開発を含めたネットワークの果たす機能は、その置かれた国や地域のイノベーション・システムの特性によって制約されうる。従って、技術変化と制度形成を共進化させて社会に対するイノベーションの貢献を促進していくためには、産学官を結ぶネットワークと分析対象となる国や地域におけるイノベーション・システムの相互作用をさらに深く理解することが必要である。特に、将来的にグローバルなレベルでサステイナビリティを追求していくにあたっては、アジアやアフリカにおける新興国と協働していくことは極めて重要となる。今後、ネットワークの国際的な連携を通じて、地球規模の社会的課題の解決に向けたイノベーションに貢献することが強く期待される。
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Research Products
(17 results)
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[Journal Article] Establishing sustainability science in higher education institutions : towards an integration of academic development, institutionalization, and collaborations with stakeholders2012
Author(s)
Yarime, Masaru, Gregory Trencher, Takashi Mino, Roland W.Scholz, Lennart Olsson, Barry Ness, Niki Frantzeskaki, Jan Rotmans
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Journal Title
Sustainability Science
Volume: 7 (Supplement 1)
Pages: 101-113
DOI
Peer Reviewed
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