2010 Fiscal Year Annual Research Report
過重債務問題の予防と解決に向けた支援者ネットワーク形成に関する国際比較研究
Project/Area Number |
21683005
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Research Institution | Kinjo Gakuin University |
Principal Investigator |
大山 小夜 金城学院大学, 人間科学部, 准教授 (10330333)
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Keywords | 多重債務 / 社会運動 / 派遣村 / 貧困 / 社会的排除 / 消費者ローン市場 / 当事者 / 東アジア |
Research Abstract |
3年目の成果は次のとおりである。 1.多重債務対策と支援者ネットワーク (1)2008年より3カ年シリーズとして開かれてきた日本社会病理学会公開シンポジウム最終回においてパネリストとして多重債務の研究事例を紹介し、「多重債務の問題解決における認識転換と外部からの介入の重要性」「制度と現実とのギャップを人びとの意味世界に着目して記述し考察することの大切さ」を明らかにした(学会発表no.2)。 (2)消費者向け無担保貸金市場の7割を占める大手4社の有価証券報告書を用いて、これら4社の、貸付にかかわる報告情報の横断分析と経年分析をおこなった(学会発表no.3)。 (3)2006年より始まった日本・韓国・台湾間での国際交流の経緯と2010年の活動内容を考察し、多重債務を国際的に取り組む際の課題として「コストの大きさ」「制度を支える認識の違い」の2点を指摘した(雑誌論文no.1)。 (4)多重債務のメカニズムを「人間関係からの排除」「社会制度からの排除」の両面から解説し、日本の多重債務運動の特徴と、近年、この運動主体が貧困問題にも取り組み始めていることを説明した(図書no.1) 2.支援者ネットワークの拡張・応用 (1)日本の多重債務運動は、法律家等の「専門家」と多重債務者という「当事者」による連携が大きな特徴である。こうした運動が国内外の今後の消費者ローン市場における諸課題にどう対応するか注視する意義を述べた(雑誌論文no.2) (2)愛知県で全国最多の派遣切りが起きた構造背景、市民や専門家等による「愛知派遣村」が結成される経緯を説明し、愛知派遣村相談会の特徴を「当事者」「専門家」「市民(当事者でも専門家でもない人びと)」「相互作用のオープンさ」の4点から考察した。様々なイベントを通して当事者の問題を自分の問題としていく人びとの意識変容の解明を今後の課題とした(学会発表no.1)。
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