2011 Fiscal Year Annual Research Report
過重債務問題の予防と解決に向けた支援者ネットワーク形成に関する国際比較研究
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21683005
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Research Institution | Kinjo Gakuin University |
Principal Investigator |
大山 小夜 金城学院大学, 人間科学部, 准教授 (10330333)
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Keywords | 多重債務 / 社会運動 / 消費者金融市場 / ギャンブル依存 / 排除と包摂 / 台湾 / 派遣村 / 改正貸金業法 |
Research Abstract |
3年目の成果は次のとおりである。 1.多重債務対策と支援者ネットワーク (1)多重債務を解決するため2006年に成立した日本の改正貸金業法の背景・経緯・帰結を、この法律の成立を求めた人々の視点と活動に着目して考察した。一般に入手可能なドキュメント、並びに聞き取りと観察にもとづく(雑誌論文no.3)。 (2)消費者金融市場のグローバル化を背景に各地で取り組まれつつある国際的な多重債務対策の一事例として、台湾で初めて多重債務自助組織が結成されるまでの背景・経緯・活動内容を紹介し、支援者ネットワークの国際的な形成過程を考察した。日本と台湾の間で行われた一連の各種集会、ロビー活動、交流等への参与観察にもとづく(学会発表no.1)。 2.支援者ネットワークの拡張・応用 (1)熊本県の多重債務者自助グループ「熊本クレ・サラをなくす会」がギャンブル依存対策を始めた背景と経緯、ここに訪れる相談者の3割を占めるギャンブル依存の実態と支援内容を紹介した。ギャンブル依存の問題解決に際し、一般によくみられる「個別的解決アプローチ」に加えて、当該グループが取り組もうとしている「社会的解決アプローチ」の応用可能性を検討した(雑誌論文no.1)(学会発表no.2)。 (2)2008年秋のリーマンショック後、派遣切りされた非正規雇用労働者が全国最多の愛知県における「派遣村」活動を、参与観察をもとに考察した。この活動の成立背景には、多重債務運動と生活保障運動との合流がある。多重債務運動における諸戦略の伝承と応用、ならびに合流によるあらたな問題発見とそれを契機とした運動の再組織化の過程と構造を分析した(雑誌論文no.2)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
欧州の動向については、現地関係者とのやりとりを通じて基礎的データ並びに最新情報の収集をはかった。アジアの動向については、「日本の法制化過程」「日本と台湾の国際連携」について成果をまとめることができた。多重債務運動の国内における拡張・応用については、「ギャンブル依存対策」「社会保障運動との合流」の視点から成果をまとめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である今年度の最終目標は、質量ともに高いレベルの支援者ネットワークの形成条件を類型的に示すことである。今年度前半は、欧州並びにアジアの関係者と国内外でそれぞれ会談する予定である。そこで、今年度前半は、これらの会談の時期にあわせて理論仮説の充実をはかり、会談を通じてその修正をおこなう。後半は、過年度も含めたこれまでの成果の整理と総括の作業にあてる。
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Research Products
(6 results)