2011 Fiscal Year Annual Research Report
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21684004
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木田 良才 京都大学, 理学研究科, 准教授 (90451517)
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Keywords | 離散群 / 軌道同型 / 測度同値 |
Research Abstract |
零でない整数p、qに対し、二つの生成元a、tをもち、aのp乗のtによる共役がaのq乗に等しいという唯一の関係式をもつ群をバウムスラッグ・ソリター群(BS群)という。本年度は、このBS群による標準確率測度空間への作用で測度を保存し自由なものを軌道同型の観点から研究した。この群は組み合わせ群論において重要な研究対象であり、多くの興味深い性質が知られている。このような群を軌道同型の観点から研究することは、組み合わせ群論において研究されている他の群を同様に研究するための足がかりになるものと期待される。BS群はHNN拡大の形をしているので、木への作用が構成される。この作用を利用し、pとqを軌道同型不変量として抽出することが可能かを調べた。いくつかの例外を除いて、pとqが異なればBS群は互いに同型でなく、ある場合では通約的でないことも知られている。軌道同型の世界では、作用する群の関係式についての情報を得ることは一般に非常に困難である。もしpやqを軌道同型不変量として取り出すことができれば、その過程は今後の軌道同型の研究に新たな手法を与えるものである。結果として、BS群の作用に対して、それに付随する実数群の作用を導入し、その同型類が元のBS群による作用の軌道同型不変量であることを示した。これにより、aの作用がエルゴード的である場合、q/pの絶対値が軌道同型不変量であることが従う。さらに、aの任意の非零巾がエルゴード的に作用するという条件下で、pとqが軌道同型不変量であることを示した。一方で、そのようなaの巾による作用のエルゴード性を仮定しても、BS群の作用の共役類を軌道同型不変量として取り出すことはできないことを示した。この事実は、BS群が剛的でないことを示すものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
無限従順群を頂点群とするHNN拡大で測度同値剛性を満たすとは限らないものに対し、それと測度同値な離散群を調べることが目的であった。本年度は無限巡回群を頂点群とするHNN拡大であるBS群の研究に終始した。実数群の作用をBS群の作用の軌道同型不変量として得ることができた。これにより、いくつかの例外を除いて、BS群は無限従順群と非可換自由群との直積と測度同値にならないことなどを示すことができた。この結果は、目的達成のための第一歩であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
BS群と測度同値になる離散群が無限従順正規部分群を含むかどうかを調べていきたい。この問題は、他の群の作用に対する軌道同型の研究において重要な役割を果たしてきたものであり、本年度証明することができた事実を一般化できるかどうかを問うものである。過去の研究では、その群が作用する負曲率の空間を利用することでこの問題が(否定的に)解決されてきた。BS群は、負曲率空間の代表である木へ作用するので、この作用が利用できるかどうかを考察したい。また、BS群だけでなく無限従順群を頂点群とするHNN拡大に対しても同様の問題に取り組んでいきたい。
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