2010 Fiscal Year Annual Research Report
不均一量子ドット集合体におけるラビ振動ダイナミクスの解明と集団コヒーレンスの生成
Project/Area Number |
21684017
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
早瀬 潤子 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (50342746)
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Keywords | 量子ドット / 光物性 / コヒーレント制御 / 量子エレクトロニクス / 量子情報 / ラビ振動 |
Research Abstract |
本研究の目的は、不均一量子ドット集合体におけるラビ振動ダイナミクスを解明することである。そこで本研究では、励起子のコヒーレンス時間が長くラビ振動観測に適した超積層歪補償InAs量子ドット集合体を対象として、フォトンエコー法およびポンププローブ法によるラビ振動の観測を行ない、詳細な理論解析を行なった。平成21年度は、量子ドットサンプル面上における入射光電場や離調、遷移双極子モーメントの不均一性がラビ振動のマクロな応答に与える影響について明らかにしたが、平成22年度はサンプル面上における不均一性だけではなく、信号が検出器に到達するまでの伝搬効果を取りいれた詳細な解析を行なった。理論計算の結果、入射光電場がガウシアン分布をしている場合、サンプル面上から離れた検出器直前でのフォトンエコー信号電場分布が、平均パルス面積の大きさによって大きく変化することを見出した。検出器直前における信号電場分布は平均パルス面積が大きくなる程空間的に大きく広がり、したがって、検出器前に設置されたアパーチャーのサイズや位置によって、観測されるラビ振動のマクロな応答が大きく変化することを明らかにした。フォトンエコー信号の伝搬効果まで取り入れてラビ振動を解析した報告は他になく、2準位系集団におけるラビ振動の基本的な振る舞いを理解する上で、重要な成果であると言える。このような詳細なラビ振動解析が可能となったのは、遷移双極子モーメントなど解析に必要な物理量をラビ振動実験とは独立に高い精度で実験的に見積もったことにより、フィッティングパラメタを用いずにラビ振動の理論解析が可能になったためであり、本研究の独創的な点であると言える。
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