2009 Fiscal Year Annual Research Report
クーロン結晶を用いた極低エネルギー極性分子-イオン衝突反応の研究
Project/Area Number |
21684023
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
岡田 邦宏 Sophia University, 理工学部, 准教授 (90311993)
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Keywords | イオントラップ / クーロン結晶 / 低速分子線 / 極性分子 |
Research Abstract |
平成21年度は,(1)シュタルク分子線速度選別器の設計・製作,(2)レーザー周波数の長期安定化法の導入,(3)高周波線形トラップにおけるクーロン結晶特性測定法の開発,を行った.以下にその詳細を記す. (1)今回新たに開発したシュタルク速度選別器は,直径2mmの円柱電極を間隔1mmで配置した四重極電極により製作し,分子線の速度選別を2段の屈曲部分(中心軌道半径r=12.5,25mm)で行う構造とした.2段の屈曲部を利用することによって差動排気室を確保し,装置全体をコンパクトにすることができた.低速分子線の透過率は装置の真空度によって大きく左右されるため,差動排気系は重要である.今回製作した装置の第二真空槽では,約48時間の排気で約6×10^<-7>Paの真空度が既に得られており,当初予定していた差動排気系の設計性能が得られていることを確認できた.また本装置の特徴として,極低温冷凍機とガスノズルを熱接触させることによってHe緩衝ガスと同時に極性分子ガスを冷却し,分子線の速度分布を低速度側にシフトさせる工夫を取り入れたことが挙げられる.これにより低速分子線流量の大幅な増加が期待できる. (2)レーザー冷却に必要な2台の半導体レーザー(波長:397nm,866nm)の周波数安定化法として,新たに安定化He-Neレーザーを用いた長期周波数安定化法を導入した.その結果,クーロン結晶を1時間以上にわたり安定に観測することが可能となり,長時間にわたるイオンー極性分子衝突反応測定においても,クーロン結晶を標的とすることが可能となった.(3)クーロン結晶のCCD画像と分子動力学シミュレーション法による結晶のシミュレーション画像を比較し,実験で観測されたクーロン結晶のイオン数,イオン温度及び結晶構造を得るための方法論を確立した.これにより,反応速度定数を導出する際にに必要となるイオン標的パラメータを得ることが可能となった.
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