2010 Fiscal Year Annual Research Report
クーロン結晶を用いた極エネルギー極性分子-イオン衝突反応の研究
Project/Area Number |
21684023
|
Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
岡田 邦宏 上智大学, 理工学部, 准教授 (90311993)
|
Keywords | イオントラップ / クーロン結晶 / 低速分子線 / 極性分子 |
Research Abstract |
平成22年度は、前年度に製作したシュタルク分子線速度フィルターの性能評価を行った。まず、分子線ガイドを透過した極性分子の速度分布を飛行時間(TOF)法によって決定し、ND_3,NH_3及びCH_20の低速分子線の生成を確認した。TOF信号から決定された速度分布は、低速分子線が概ね数ケルビン以下の温度をもっていることを示した。年度後半には、それぞれの極性分子について速度分布及び分子線強度の各種パラメータ(ガス圧力、ガス温度、ガイド電圧)依存性を詳細に測定した。その結果、分子線強度がガイド電圧に対して2次の依存性を示すこと、ガイド電圧の減少に伴い速度分布が低速側にシフトすることを確認した。また、ノズルにかけるガス圧力を40-50mTorrにすると低速分子線強度が最大値をとることが分かった。一方、ノズル温度(ガス温度)を160-250Kに冷却することで、室温の場合に比べて分子線強度を約2倍増加させることができることを確かめた。以上の実験結果によって、開発したシュタルク分子速度フィルターが、本研究目的を達成するために必要十分な性能を有することを確認した。一方、極低エネルギー極性分子-イオン反応測定で必要となる極低温イオン標的を生成するために、レーザー冷却Ca^+イオンによる分子イオンの共同冷却実験を行った。クーロン結晶化したCa^+中でCaH^+を生成し、CCDカメラで撮像したCa^+の蛍光画像と分子動力学シミュレーションの結果を比較することにより、CaH^+の共同冷却結晶化の達成を確認した。また、CaH^+のセキュラー温度が10mK以下の極低温状態にあることも併せて確認した。この成果によって、極低温分子イオン標的の生成にも成功したこととなり、本研究の目的である極低エネルギー極性分子-イオン反応測定を行うための準備が整ったと言える。
|