2011 Fiscal Year Annual Research Report
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21684024
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
若本 祐一 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (30517884)
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Keywords | 生物物理 / 1細胞計測 / ES細胞 / 分化 / 応答特性 |
Research Abstract |
本研究課題では、様々なパターンで変動する誘導環境を入力情報としたときの、幹細胞の分化運命決定の情報処理ロジックを明らかにすることを目指している。そこで、(1)変動する分化誘導環境を自在に作り出し、幹細胞の分化応答を1細胞レベルで計測できるシステムを立ち上げること、(2)このシステムを用いて、マウスES細胞をモデルシステムとして、分化応答の入出力応答を定量計測することという2つを実現したい。平成23年度の成果は以下である。 1.ステップ型の分化誘導環境変化に対するマウスES細胞の応答計測 昨年度までに開発した1細胞培養装置を用いて、未分化維持用の培地中で培養されているES細胞に対し分化培地環境条件をステップ型で課し、その応答を1細胞レベルで直接顕微鏡下で観察する実験を行った。データ解析の結果、未分化維持培地、分化培地いずれにおいても、分裂間隔時間や細胞の生死には姉妹細胞間で正の相関があり、1細胞のふるまいにエピジェネティックな要因が働いていることが示唆された。さらに、未分化マーカーであるNanogの発現量は、分化培地中でも数日のあいだはその平均が顕著に減少することはないが、発現量のばらつきが大きくなることを観察している。また、その結果生じる平均から大きく外れた高いNanog発現量をもつ細胞は、死ぬ確率が高くなることを明らかにした。この結果は、通常の集団計測で得られる平均Nanog発現量の時間変化の結果の解釈に再考を求めるものであり、平均発現量の変化は、細胞の応答だけでなく、発現量依存的に生じる細胞死の影響を反映したものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、実際に計測に使用可能なES細胞用の1細胞計測システムができあがっており、それを用いて、分化誘導培地への応答を1細胞レベルで計測する実験を進められている。与える分化誘導条件は、まだステップ上の変化に限られているが、今後いくつかのパターンでの応答を計測することを計画している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は当初の予定通り、これまでに作製した1細胞計測システムを用いて、いくつかの分化誘導条件下でのES細胞の応答を1細胞レベルで計測する実験を続け、ES細胞の分化応答様式を同定することを目指す。
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