2010 Fiscal Year Annual Research Report
固液界面の脂質二重膜に形成される非平衡・非対称ドメイン内部での分子挙動の解明
Project/Area Number |
21685004
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
手老 龍吾 豊橋技術科学大学, エレクトロニクス先端融合研究所, 特任助教 (40390679)
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Keywords | 一分子計測 / 脂質 / 表面・界面物性 |
Research Abstract |
細胞膜内では脂質の2次元ドメインが膜タンパク質の足場となる反応場を提供している。本研究では、固体基板上の支持平面脂質二重膜(SPLB)を用いて脂質二重膜内の2次元構造とその物性をnm~μmの幅広いスケールで明らかにし、なおかつ基板表面構造を利用して制御することを目的としている。平成21年度に構築した蛍光顕微鏡装置を用い、斜入射照明一分子蛍光追跡によってSiO_2/SiおよびTiO_2(100)表面上のdioleoylphosphatidylcholine (DOPC)-SPLB中の脂質分子の拡散挙動を2000fps~33fpsの時間分解能で計測した。ミリ秒・100nmオーダーから秒・μmオーダーの幅広い時間・空間スケールにおける分子拡散挙動をその場観察することに成功した。得られた拡散軌跡をもとに脂質分子拡散係数の時間・空間依存性をプロットしたところ、原子ステップピットを持つTiO_2(100)単結晶表面上(ステップ幅~150nm)では、2ms・200nmの時間・空間スケールにおいて4.7μm^2/sの拡散係数が、10ms・500nmまでの間に3.0μm^2/sまでに減少することを見出した。本来DOPC単成分のSPLBは空間スケールに依らず均一であるので、TiO_2(100)表面の原子ステップピットがDOPC-SPLB中に拡散障壁を生みだしていると考えられる。分子拡散が時間・空間スケールに依存する現象は異常拡散と呼ばれ細胞膜内においても起きることが知られている。表面固体表面ナノ構造を利用して細胞と同程度の空間サイズで人工脂質膜中に異常拡散を誘起し、本研究を通して構築した顕微鏡装置を用いることで、その様子を可視化することができた。
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