2011 Fiscal Year Annual Research Report
液体界面における高分子のナノスケール構造・物性とその制御
Project/Area Number |
21685013
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田中 敬二 九州大学, 大学院・工学研究院, 教授 (20325509)
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Keywords | 高分子 / 界面 / 分子鎖熱運動性 |
Research Abstract |
H23年度は、接触角測定に基づき、水界面におけるポリメタクリル酸メチル(PMMA)の分子運動特性を評価した。PMMA膜上に水滴を滴下した際の接触角は着滴直後から時間(t)に対して指数関数的、に減少し、その後、単調に減少した。これまでに、PMMA膜最外層の局所コンフォメーションは、水と接触すると室温でさえも変化することを明らかにしている。したがって、着滴直後に観測された接触角の減少は、水との接触によって誘起されたPMMA膜最外層の局所コンフォメーション変化に対応する。一方、接触角が単調に減少する時間域は、水の蒸発に起因する。実験結果を式{(θ_<ini>-θ_<ter>)exp(-t/τ)+kt+θ_<ter>}に基づきフィットし、水との接触によって誘起されたPMMA膜表面のコンフォメーション変化の時定数(τ)を求めた。ここで、θ_<ini>およびθ_<ter>はそれぞれ着滴直後および膜界面のコンフォメーション変化が擬平衡状態に到達した際の接触角・kはま蒸発による接触角の減少速度である。接触角の時間依存性に基づき評価したτは約2sであった。水界面におけるPMMA膜の凝集構造変化を議論するため、τの温度依存性を評価した。τがArrhenius型の温度依存性をとると仮定し、見かけの活性化エネルギー(△H)を算出でした。直線の傾きより評価した△Hは32kJ・mol^<-1>であった。水平力顕微鏡(LFM)測定に基づき評価した水との界画における主鎖のセグメント運動の△H=120kJ・mol^<-1>と比較すると、その値は著しく小さい。水中LFM測定の分析深さが4.5nmであるのに対し,接触角測定は膜の最界面の情報を反映している。したがって、界面におけるPMMAの分子鎖熱運動は水相に近づくほど速いといえる。さらに、NR測定から、水界面に存在するPMMAは室温においてさえも大きなスケールの構造再編成を達成できることが明らかとなっている。これらの結果を考慮し、水界面に存在するPMMA鎖には膜厚方向に分子鎖熱運動の勾配があると結論した。
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