Research Abstract |
近年,次世代太陽光エネルギーとして,色素増感太陽電池が着目されている.色素増感太陽電池の最大の問題点は低い光電変換効率にあり,この問題を解決することは不可欠である.そこで光電変換のメカニズムをスピンダイナミクスという観点から解明し,次世代太陽光エネルギーデバイスの開発を最終目的として研究を行ってきた.色素分子が光により励起されたのち,電荷分離状態に到達するメカニズムおよび,その失活を,時間分解ESRによって研究を行ってきた.装置的,物質的両面からのアプローチにより解明を試みており,21年度には,装置的なアプローチとして,時間分解能の向上,波長可変レーザーシステムの構築を目指してきた.時間分解能に関しては,目標でもあるおよそ4ns程度の時間分解能を実現し,波長可変システムに関しては,発振することを確認することはできた.22年度にも継続して行い,より効率的な波長可変システムの構築を試み,色素増感太陽電池系のスピンダイナミクス研究へと適用していく予定である.また物質的には,増感剤の一つとして希土類金属(Gd)内包フラーレンのスピンダイナミクスを調べた.希土類金属には,定常状態で7つの4f電子を持つためにS=7/2の電子スピンが存在する.このスペクトルと光励起後に発生する励起状態のスピンダイナミクスとを区別する必要がある.21年度には,定常状態のスピン状態を明確にすることを目的に,多周波ESR測定を行った.2個のGdイオンを内包したフラーレンを調べ,S=7が基底状態存在することを明らかにした,またパルスESR技術を使用して電子スピンの緩和時間を調べたところ,希土類特有の長い緩和時間を観測した.つまり希土類色素増感太陽電池の色素の候補の一つとして可能性が高いことを明らかにした.
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