2009 Fiscal Year Annual Research Report
電界誘起による酸化物単結晶材料での新規超伝導の発現
Project/Area Number |
21686002
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
上野 和紀 Tohoku University, 原子分子材料科学高等研究機構, 助教 (10396509)
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Keywords | 超伝導 / 電界効果トランジスタ / 酸化物エレクトロニクス / イオン液体 |
Research Abstract |
本研究は新しい電気的な手法による新規超伝導体の発見を目指している。本年度の研究ではKTaO_3という従来超伝導にならないとされてきた材料で初めて超伝導を発見した。また、今後の研究を進めていくために必要となるインハウスでの超伝導測定ができる極低温測定系の立ち上げを順調に進め、最低0.3Kでの超伝導評価が可能となった。 銅酸化物超伝導体を初め、多くの超伝導体が絶縁体に不純物を加え、電気伝導を担うキャリアを誘起することで開発されてきた。しかし、超伝導を引き起こすためには結晶格子1つあたり0.1個近くという膨大な量のキャリアが必要である。そのため、この手法による超伝導材料開発は多量の不純物を加えることができる一部の材料に限られてきた。我々は不純物を用いる化学的な手法にかわり、トランジスタを用いて材料にキャリア誘起する電気的な手法による超伝導材料開発を目指している。高濃度のキャリアを誘起するため、我々は電解液という液体をゲート絶縁層としてもちいる液体ゲートトランジスタ(電気二重層トランジスタ)を用いている。 本年度の研究では不純物では超伝導を起こすことができない絶縁体KTaO_3に液体ゲートトランジスタを作成し、結晶1格子あたり最大0.2個という多量のキャリア誘起に成功した。鍵になったのはゲートにもちいる電解液であり、イオン液体という純粋な状態で電解液として働く材料を用いて非常に安定な界面を作成、高耐圧のゲートを実現した。そして0.05Kという極低温まで冷やすことでKTaO_3で初めて超伝導を実現した。本年度の研究は従来の手法で不可能だったことを電気的な手法によって乗り越えられることを証明したと言う点で重要である。来年度以降、高い転移温度を持つ超伝導新材料の開発が強く期待される。
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Research Products
(9 results)