2010 Fiscal Year Annual Research Report
高精度油膜温度計測に基づく弾性流体潤滑レオロジーモデルの再構築
Project/Area Number |
21686016
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
八木 和行 九州大学, 大学院・工学研究院, 准教授 (50349841)
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Keywords | 弾性流体潤滑 / レオロジー / 温度 / 圧力 / 固化 / 赤外線 / せん断 / 滑り |
Research Abstract |
平成22年度前半にはまず,静的状態における潤滑油の状態図を作成することを目的とし,ダイアモンドアンビルセルによる高圧力容器の設計を行った.この装置は,対向させたダイアモンドアンビルで,直径0.6mmの貫通穴を空けたステンレス製のガスケットを挟み込むことにより潤滑油を昇圧させるものである.設定可能最高圧力は3GPa,最高温度は150℃までとした.圧力の同定には,潤滑油内に混入したルビー片の蛍光スペクトルの圧力依存性をRaman分光測定器で測定して求めた.その結果,動的条件で特異油膜形状が発見されている一価のアルコールの一種であるdodecanolについて,設定温度60℃では,圧力がわずか0.2GPaで結晶化を起こすことが明らかとなった.一方,動的条件で特異油膜形状が発生しなかった二価および三価のアルコールでは,圧力を1GPaまで昇圧させても結晶化せずに液体のまま振舞っていることがわかった.本年度後半には,前年度に購入した赤外放射計を用いて,動的条件における潤滑面の温度測定を行った.潤滑面の片面には赤外透過材料であるサファイアを用い,サファイア越しに温度測定を行った.その結果,特異油膜形状が発生したdodecanolでは,周囲温度40℃の条件では高い滑り率条件であっても潤滑面の最高温度は60℃程度であることが明らかになった.そして,動的実験で測定された温度および,最高ヘルツ圧力である0.5GPaのときにおける静的条件での相状態を調べると,dodecanolは結晶化している状態であることがわかった. 以上のとおり,特異油膜形状発生時における温度及び圧力では,潤滑油は静的状態では結晶化していることが明らかとなった.本研究の成果に加え,1ms以下の通過時間中における結晶化の速度依存性が明らかになれば,潤滑油の固化による特異油膜形状の発生といった仮説がより説得力を増すが,この残された課題も,本研究の成果によって明確化したといえる.
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Research Products
(2 results)