Research Abstract |
先に実施した通常の鋼製柱脚とモルタル基礎に関する振動台実験では,「最大静止摩擦係数はすべりの繰り返しによらず,安定して0.8となる」,「すべりが生じているとき,動摩擦抵抗力はすべり速度の上昇とともに急激に低下する」 という結果を得た。本年度は,まず,それらの現象を数値解析用に定式化し,これを組み込んだ鋼構造建物に関する弾塑性地震応答解析を実施した。そして,(1a)上部構造の損傷率は最大静止摩擦係数に対する降伏ベースシヤ係数の比で決まり,この強度比を1以上にすることで損傷率が半減する,(2a)地動速度が1.0m/s以上になる地震動に対して損傷低減を得るとき,柱脚すべりは0.3mを超える,という資料を整理した。すなわち,(1b)鋼とモルタルの最大静止摩擦係数を前提として柱脚すべりによる損傷抑制を意図する場合,上部構造に通常の建物よりも相当大きな降伏耐力が必要となる,(2b)同様に,すべりによって変形が加わる配管等のライフラインに対して,免震建物並みの配慮が必要となる,という問題を確認した。これらに対して,(1c)最大静止摩擦係数を0.4-0.5程度に低減して強度比を大きくする柱脚の開発,(2c)構造物への損傷低減効果を維持しつつ最大すべり変位を抑制するストッパーの開発,という2つの回答を定め,平成22年度中に摩擦抵抗低減柱脚に関する振動台実験を実施した。そこでは最大静止摩擦係数を0.2にまで低減できる潤滑剤を見出すことができ,現在は,通常の柱脚とハイブリッドに用いて摩擦抵抗を調節する仕組みを持つ実建物の設計に取り組んでいる。なお,弾塑性上部構造,ハイブリッド柱脚,基礎ストッパーで構成される構造システムに関する振動台実験を平成23年度に実施する。
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