2011 Fiscal Year Annual Research Report
基礎との摩擦を利用する損傷抑制型鋼構造建物の開発と耐震性評価
Project/Area Number |
21686054
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Research Institution | National Research Institute for Earth Science and Disaster Prevention |
Principal Investigator |
長江 拓也 独立行政法人防災科学技術研究所, 減災実験研究領域・兵庫耐震工学研究センター, 主任研究員 (90402932)
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Keywords | 鋼構造建物 / 基礎 / 摩擦 / すべり速度 / 損傷抑制 / 振動台実験 / 潤滑 / 黒鉛 |
Research Abstract |
先に実施した通常の鋼製柱脚とモルタル基礎に関する振動台実験では,(1)最大静止摩擦係数は動的なすべりの繰り返しによらず安定して0.8程度となる,(2)すべりが生じているとき動摩擦抵抗力はすべり速度の上昇とともに急激に低下する,という結果を得た。また,それらの現象を数値解析に展開し,鋼構造建物に関する弾塑性地震応答解析を実施したところ,(3)上部構造の損傷率は最大静止摩擦係数に対する降伏ベースシヤ係数の比で決まり,この強度比を1以上にすることで損傷率が半減する,(4)地動速度が1.0m/s以上になる地震動に対して損傷低減を得るとき柱脚すべりは0.3mを超える,という結果を得た。最終年度では,摩擦抵抗低減型・すべり変位抑制型柱脚の開発を目的とする振動台実験を実施し,(5)柱脚・基礎間に黒鉛からなる潤滑層を介在させることで最大静止摩擦係数および動摩擦係数が安定して0.2程度となる,(6)ベースプレートを鋳鉄にすることで内部黒鉛の自己潤滑作用が生じ最大静止摩擦係数および動摩擦係数が安定して0.3程度となる,(7)ゴムを利用した基礎ストッパーによって残留変形がほぼゼロに抑えられる,という結果を得た。そして,(8)上部構造の損傷度と基礎の最大すべり量を,消費エネルギーのバランス,ストッパーの衝突変形量等の観点から評価する手法を提案した。すなわち,通常の鋼構造建物の柱脚に安価な付加材料を適用することで地震時の損傷を大幅に低減することができる損傷抑制型建物,およびその性能評価手法を提案することができた。
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