Research Abstract |
申長期の入院生活を送るこどものための療養環境を,こどもや家族の携点に立って構築することは喫緊の課題である.本研究では,中長期の加療を要する小児医療を提供する小児病院と小児病棟において,患児本人と付添家族,病院スタッフの視点から,小児の療養環境を入院生活の側面から評価する基準となる項目を導出し,その検証を経ての環境づくりの提言を目的とする.本年度の研究成果の概要は以下の通りである. 1.中長期の加療を行う小児病棟において,患児本人と付添家族,関係スタッフに対する観察調査やアンケート調査,インタビュー調査等を行い,療養環境に求められることがらを評価項目として整理してきた.本年度はこの基準をもとに,全国の小児病院と小児病棟を対象に療養環境の実態と環境への評価を問うアンケート調査を行い,評価項目の検証を行った. 2.病態が異なることで必要とされる療養環境が異なることを念頭におき,開放/閉鎖,外部空間の条件等の療養環境が異なる3つの児童精神科病棟において,スタッフへのアンケート調査,キャプション評価法による環境評価調査,ラダーリング・インタビュー調査,観察調査を行った.この結果に基づき,病態や患児の年齢に応じて環境に求められることがらを整理し,療養環境の構築に際しての理念から具体的な環境のあり方に至る環境づくりの構造を含む環境評価項目を示した. 3.本研究の成果を活かし,小児病棟の改修事例に対して病棟プレイルームの計画に参画し,環境づくりの実践を行った.またその効果をPOE研究によって確認した. 4.これらの結果を踏まえて小児の療養環境における環境づくりの理念から具体的な環境のあり方の工夫や提言に至る構造を視覚化して伝える表現方法を開発した. 本研究の成果は,病院関係者への療養環境への意識と理解を深め,療養環境構築に関する手法や理念を複数医療機関や他職種間で共有することや,小児の療養環境の向上に寄与するものと考える.
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