Research Abstract |
本研究の最終目標は,さまざまな物質表面にナノ・マイクロ単結晶を三次元成長・配列した複合表面を創成する技術を確立することである。本年度は特に,以下の3課題に注力した。 (1) ナノ単結晶の規則的配列手法の探索 本研究(本年度)では,ニオブ酸塩ナノチューブ(NT)の懸濁液を作製し,それをポリスチレン微粒子テンプレート上に噴霧することでハニカム構造をもつニオブ酸塩NT薄膜を作製できた。さらに,自己組織化単分子膜を利用した親水/疎水パターン上に,ニオブ酸塩NT懸濁液を塗布すると,親水領域にのみNT層を形成できた。また,常温で溶液化やペースト化した原料を使用した新しい成膜技術『フラックスコーティング法』を開発した。本方法では,さまざまな物質表面に異方性ナノ結晶を垂直配向成長できた。配向を制御する重要な因子は,基板の表面微細構造と化学組成であり,結晶-基板間の界面を詳細に観察・分析することが重要であるとわかった。 (2) フラックス概念を導入した噴霧熱分解法による三次元構造体の作製 事前研究では,タングステン酸ナトリウム結晶の噴霧熱分解育成に成功している。本研究(本年度)では,フラックス概念を導入した噴霧原料を用いることで,ユニークなウィスカー形状のタングステン酸カリウム結晶層やバルク形状のタングステン酸ストロンチウム結晶層を形成できた。 (3) 光・プラズマ制限照射によるナノ単結晶の位置選択性成長 上記(1)のフラックスコーティング法では,結晶化のエネルギーとして熱エネルギーを用いた。しかし,課題(3)ではコーティング表面に大気圧窒素プラズマを照射し,アパタイト,酸化スズ,酸化亜鉛などの高品質ナノ結晶層を配向成長できた。これらは,上記(1)と同様の理由で配向成長することがわかった。また,結晶層を形成する個々の結晶はきわめて高品質であり,フラックス法の特長を良く反映していた。
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