2009 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙機の長秒時航行へ向けた極低温推進薬の熱流動挙動解明とその数値予測技術の構築
Project/Area Number |
21686080
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
姫野 武洋 東京大学, 大学院・工学系研究科, 准教授 (60376506)
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Keywords | 自由表面流 / 気液二相流 / 濡れ性 / 伝熱 / 相変化 / CFD / ロケット / スロッシング |
Research Abstract |
本研究では、宇宙輸送システムにおける極低温流体管理技術の確立へ向け、推進薬タンクを想定した密閉容器内部の自由表面流を対象とし、様々な加速度環境における熱流動特性を、地上実験と先進的な数値解析の両面から解明することを目的としている。同時に、宇宙輸送システムの推進機関を設計するための基盤技術として、相変化と実在流体効果を適切に考慮した独自の自由表面流数値解析手法を発展させることを目指す。 実験では、高精度の位置決めが可能な電動スライダーを構成要素とする加振器を用い、断熱密閉容器を製作して加振実験に供した。供試液体として、相変化の影響を排除するために不揮発性の常温シリコン油を用い、断熱膨張を利用して容器内に気液間温度差を生じさせたうえで、液体揺動(スロッシング)と温度場が連成する流れ場を創出した。容器内部の圧力が、密閉された気体の内部エネルギー総和に比例することを利用し、熱交換に起因する圧力変動に関しても再現性のあるデータを取得し、熱入力を定量的に評価できた。初期条件と境界条件が比較的明確に課された系を実験室で実現することで、数値解析の検証用に適する実験データを取得できた。 並行して、断熱容器と同じ内壁形状を有する透明容器を製作して加振実験に供し、高解像度の高速度カメラを用いた微速度撮影を行うとともに、液体揺動の振幅や砕波発生の有無を観察した。加速度振幅、加振周波数、気液温度差を色々に変えた実験を通じ、液体揺動の規模と圧力変動の相関を定量的に考察した。その結果、線形応答的で穏やかな液体揺動の場合に比べ、飛沫や砕波の発生を伴う非線形応答的で激しい液体揺動の場合に、気体側への熱入力が桁違いに大きくなることが確認された。加えて、液面観察結果と圧力変化履歴の照合により、飛沫の発生に加えて、液体揺動が容器壁を濡らすことに伴う液膜の存在が、気体側への熱入力に大きく影響していることが示唆された。 数値解析については、報告者らが開発している自由表面流解法(CIP-LSM)を用い、先ずは、不揮発性の供試液体を用いた加振実験に対応する計算を行った。実験データとの比較を通じ、液面における適切な熱伝達モデルの検討と、固体壁面上の薄い液膜を再現できるだけの格子解像度の検討を行ったうえで、加振実験の数値的模擬を試みた。その結果、液体揺動に伴う気液間熱伝達促進と圧力変動をよく再現することができた。相変化を考慮した計算手法の高度化へ向け、準備を進めることができた。
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