2011 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙機の長秒時航行へ向けた極低温推進薬の熱流動挙動解明とその数値予測技術の構築
Project/Area Number |
21686080
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
姫野 武洋 東京大学, 大学院・工学系研究科, 准教授 (60376506)
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Keywords | 自由表面流 / 気液二相流 / 濡れ性 / 伝熱 / 相変化 / CFD / ロケット / スロッシング |
Research Abstract |
本研究では、宇宙輸送システムにおける極低温流体管理技術の確立へ向け、推進薬タンクを想定した密閉容器内部の自由表面流を対象とし、様々な加速度環境における熱流動特性を、地上実験と先進的な数値解析の両面から解明することを目的としている。同時に、宇宙輸送システムの推進機関を設計するための基盤技術として、相変化と実在流体効果を適切に考慮した独自の自由表面流数値解析手法を発展させることを目指す。 本年度は、研究初年度に製作した電動加振器と耐圧断熱密閉容器に改良を加えた加振実験を継続した。供試液体として、昨年までの常温不揮発性流体に加え、揮発性流体(FC-72)を供し、液体揺動と温度場および相変化が連成する流れ場を実現した。容器内部の圧力が、気体側における内部エネルギーの総和に比例する値を呈することを利用し、熱交換に起因する圧力変動を計測し、潜熱と顕熱を含めた気体側への熱入力を定量化するのと同時に、透明な断熱容器を加振実験に供し、高速度カメラにより液体揺動の振幅や砕波発生を観察することで、液体揺動の規模と圧力変動の相関を整理した。さらに、宇宙航空研究開発機構の協力を得て、昨年実施した液体窒素の場合に加え、液体水素を用いた実験を試み、より実際的なロケットタンク内熱環境に関する知見を獲得した。液体と同種の気体による加圧を行い、タンクが単成分非平衡二相系場合、砕波を伴う大振幅の液体揺動に伴って、系の温度は液体温度に支配され、系の圧力は液体温度に対応した飽和蒸気圧に向かって短時間のうちに変化することが確認された。 数値解析については、申請者らが開発している自由表面流解法(CIP-LSM)を用い、加振実験に対応する計算を行った。並行して、既存の実験データを用いて沸騰現象の直接計算を試み、本解析における相変化現象の定式化が妥当であることを確認するとともに、人為定数をできるだけ排した相変化モデルを構築した。また、本研究課題で構築される数値流体解析手法をより実用的なものとするため、汎用計算機(PC)での計算実行速度向上のための残差切除法に基づく計算技法を実装した。
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