2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21686088
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
早川 恭史 Nihon University, 理工学部, 准教授 (40307799)
|
Keywords | 単色X線源 / 空間コヒーレントX線 / パラメトリックX線放射 / PXR / 完全結晶 / 非対称結晶面 / 電子リニアック |
Research Abstract |
パラメトリックX線放射(PXR)において放射源となる結晶の非対称性と形状の効果を調べるため、端が楔状になっているSi(111)結晶板をターゲットとして準備した。まず用意したのは裏面が対称面となるように表側に1.15゜の緩やかな勾配のカットを施して楔状にしたもので、端の面から出てくるX線の影響の抑制を狙ったものであった。非対称角は僅かに1.15゜であったが、この結晶から得られるPXRの強度は対称平板結晶に比べ、X線のエネルギーにもよるがおよそ1.5~2倍程度増加するとともに、イメージングの際に従来見られた像のプレが抑制された。PXRビームは第2結晶による回折によって輸送されるが、その回折幅が狭くなることが確認され、スペクトル密度の向上が示唆された。この楔型結晶による強度の増加は、この効果によるところが大きく、回折強調型位相コントラストイメージング(DEI)でも良好な像が得られるようになった。 さらなる非対称効果を期待して、楔面の非対称角が6.5゜となる楔型結晶を用意してターゲットに用いて実験を行った。非対称面がgrazing入射となる17.5keVでの結果は、非対称角1.15゜に比べて20~30%程度の強度の増加が見られたものの、明確なgrazing入射の効果とはいえないものであった。しかしながら、空間コヒーレンスやスペクトル線幅に関しては優位性がみられ、17.5keVでは高品質なDEI測定が可能となり、実際に吸収像と位相像の分離が容易となった。また9keV付近での測定で得られたCuのX線吸収スペクトルの分解能は3~4eVと見積もられ、これまでSi(111)で発生したPXRを用いて得られた結果においては最も良い分解能であった。 以上の結果から、PXRの高品質化と高強度化の両立には非対称角だけではなく形状の効果が重要であることが示唆される。
|