2011 Fiscal Year Annual Research Report
立体構造情報を利用した高輝度蛍光タンパク質の合理的なデザイン法の開発
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21687007
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松田 知己 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (50419206)
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Keywords | 蛍光タンパク質 / 構造生物 / タンパク質工学 / 分子シミュレーション |
Research Abstract |
X線結晶構造解析により決定した立体構造間の比較・解析 前年度までのX線結晶構造解析により、UV励起蛍光タンパク質Sirius開発の初段階で作製された無形構成の変異体mSECFP-Y66Fでは、それ以降の改良変異体で見られる5員環と6員環から形成されている蛍光発色団の6員環部分が脱離していることが立体構造情報から明らかになっている。また、π共役系の広がりが大きいほど吸収・蛍光スペクトルの長波長化が起こるという予想に相反して、5員環のみからなる発色団を持つmSECFP-Y66Fの吸収スペクトルの形状が5員環と6員環が共存し、よりπ共役系の広がりを持つと思われるSiriusのものとほぼ一致するような知見も得られている。この興味深い知見を検証するために、北海道大学電子科学研究所の玉置教授の研究室と共同でmSECFP-Y66FとSiriusそれぞれの発色団単体の化学合成及び吸収・蛍光スペクトル比較を行ったところ、いずれもSiriusタンパク質に近い吸収波長ピークを示した。 分子シミュレーションによる解析 立体構造を決定することのできた変異体について、立体構造と蛍光量子収率の相関を考察するためにQWMM-MD(量子化学/分子力学-分子動力学)計算を行う系を大阪大学蛋白異質研究所中村教授の研究室との共同研究により構築している。第一段階として、蛍光発色団のみに対してQM計算を行い、その結果を、Sirius、mSECFP-Y66F両蛍光タンパク質の発色団の吸収ピーク波長と比較したところ、測定値に近い値を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度以前の、タンパク質結晶化の条件が各変異体によって異なったため立体構造を得るまでに時間がかかってしまったため、全体的な計画の遅れが生じている。しかし、22年度の状況を踏まえて修正を加えた23年度交付申請時の研究計画の内容はおおむね達成された。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までにX線結晶構造解析によって決定したUV励起蛍光タンパク質Siriusおよびその変異体の立体構造(合計6種類)を比較する。各変異体の変異導入に伴う発色団周りの環境の変化に着目し、発色団自身の平面性、周囲のアミノ酸残基との位置関係、キャビティーの大きさ等を指標にした比較を行い、これらの立体構造的特徴と蛍光量子収率の変化の関係性を考察する。また、大阪大学蛋白質研究所の中村春木教授の研究グループに助言と協力を仰ぎながら、タンパク質内部の発色団の部分のQM計算による量子化学的な解析、MD計算による動的な構造の考慮により、この現象を理解することに取り組む。
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Research Products
(2 results)