| Research Abstract |
ユビキチン(Ub)は,酵母からヒトまで広く保存されたタンパク質であり,鎖状につながった複数個のUb(Ub鎖)がプロテアソームによるタンパク質分解のシグナルとして働くことが一般に知られている.一方,最近になって,Ub(鎖)が,タンパク質分解以外にも様々な分子シグナリングにおいて重要であることが明らかになってきている.本研究では,Ub鎖と結合タンパク質との複合体の立体構造をX線結晶構造解析によって決定し,変異体を用いた結合解析や反応速度論的解析によって,Ub鎖識別メカニズムを解明する.平成21年度は,Lys63結合型Ub鎖と特異的に結合するRap80(DNA修復関連因子)のタンデムUIM (ubiquitin interacting motif)およびTAB2/TAB3(TNF経路などの炎症シグナリングで働くシグナル分子)のNZF型zinc fingerとLys63結合型Ub鎖との複合体の結晶構造を決定し,変異体の結合解析と併せて,Lys63結合型Ub鎖認識メカニズムを解明した(Sato et al., EMBO J., 28,2461-2468,2009 ; Sato et al., EMBO J., 28,3903-3909,2009).一方,これまでLys63結合型Ub鎖に特異的に結合すると考えられていたNEMO (TAB2/TAB3と同様に炎症シグナリングで働くシグナル分子)は,むしろ直鎖型Ub鎖と強く結合することが報告されたが,我々は,Lys63結合型Ub鎖とNEMOとの複合体の結晶構造を決定することによって,Ub鎖の種類の違いに応じて結合の強弱が決まるメカニズムを明らかにした(Yoshikawa et al., FEBS Lett., 583,3317-3322,2009).これらの解析により,多様なUb鎖認識メカニズムを明らかにした.
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