Research Abstract |
ユビキチン(Ub)は酵母からヒトまで広く保存されたタンパク質であり,鎖状につながった複数個のUb(Ub鎖)がタンパク質分解のシグナルとしてはたらくことが一般に知られている.一方,タンパク質分解以外の様々な分子シグナリングにおける重要性も次々と明らかにされてきている.本研究では,Ub鎖と結合タンパク質との複合体の立体構造をX線結晶構造解析によって決定し,変異体を用いた機能解析と合わせて,多様なUb鎖識別メカニズムを解明する.これまでに,我々は,Lys63結合型Ub鎖(K63鎖)に特異的な切断酵素や受容体とK63鎖との複合体の立体構造を決定し,その認識メカニズムを解明してきた(Sato et al., Nature, 455, 358-362 ; Sato et al., EMBO J., 28, 2461-2468, 2009 ; Sato et al., EMBO J., 28, 3903-3909, 2009 ; Yoshikawa et al., FEBS Lett., 583, 3317-3322, 2009).今年度は,Met1を介して結合したUb鎖(直鎖)に特異的なZnフィンガー型のUb鎖受容体と直鎖特異的なUb鎖受容体がNF-KBシグナリングの活性化に重要であることを明らかにし,その複合体の結晶構造と変異体を用いた結合アッセイおよびレポーターアッセイと合わせて,直鎖特異的な認識メカニズムを報告した(Sato et al., PNAS, 108, 20520-20525).また,DNA二重鎖切断修復においてK63鎖の伸長を抑制するタンパク質複合体の結晶構造決定にも成功した.立体構造に基づいた変異体解析の結果と合わせて論文を投稿し,現在改訂中である.
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