2010 Fiscal Year Annual Research Report
低エネルギーSAD法における回折データの高シグナル低ノイズ化に向けた技術開発
Project/Area Number |
21687010
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
山田 悠介 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 助教 (20391708)
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Keywords | タンパク質結晶構造解析 / 低エネルギーSAD法 / 構造生物学 |
Research Abstract |
低エネルギーSAD法は、硫黄等の軽原子からの微弱な異常散乱シグナルを元に蛋白質のX線回折データの位相を決定し、構造解析を行う手法であるが、汎用化や解析困難な蛋白質結晶への応用のためにはまだまだ開発・検討すべき事項が残されている。低エネルギーSAD法の中で、如何に微弱な異常散乱シグナルを正確に測定することが重要であり、そのためには、出来るだけ低いエネルギーのX線を用いて異常散乱シグナルを増大させる一方で、低エネルギー領域で増大するX線の吸収効果によるノイズの混入を防ぐ必要がある。本年度では、昨年度開発した低温ヘリウム吹き付け装置を用いて、低エネルギーSAD実験を行い、ヘリウムガスによるバックグラウンドノイズの低下と位相決定精度の向上を確認し、その有効性を示した。また更なるノイズ軽減のために結晶試料から検出器表面までの空間を完全にヘリウムガスに置換するヘリウムチャンバーの作成を行った。異常散乱シグナルのリアルタイムモニタリングのため、低エネルギーSAD法に適したシグナルの指標を見出し、得られたデータセットが位相決定に十分なシグナルを有しているかどうかの確認や、放射線損傷による異常散乱シグナルの低下の検知に有効であることを示した。また、その経時変化をリアルタイムでモニタリングするために、回折データを高速に処理する計算機クラスタシステムを導入し、ソフトウェアの開発を行った。そして、これらを基に多数の結晶からのデータの足し合わせによるデータ精度向上に取り組んだ。
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