2009 Fiscal Year Annual Research Report
細胞競合を介した上皮の動的恒常性維持システムの解明
Project/Area Number |
21687019
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
井垣 達吏 Kobe University, 医学研究科, 特命准教授 (00467648)
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Keywords | 細胞競合 / 細胞死 / ショウジョウバエ / がん / 遺伝学 |
Research Abstract |
多細胞生物の器官発生とその恒常性維持は、細胞増殖と細胞死の協調によって動的に制御されている("動的恒常性維持")。近年、この組織レベルでの動的恒常性維持に、細胞間コミュニケーションを介した「細胞競合」と呼ばれる機構が重要な役割を果たしていることが分かってきた。細胞競合とは、組織中で隣り合う2つの細胞間で細胞分裂速度に差異が生じた場合に、(1)分裂速度の遅い方の細胞("敗者")が細胞死によって組織から排除され、(2)そのスペースが分裂速度の速い方の細胞("勝者")によって占有される現象である。すなわち、細胞競合は細胞分裂速度の遅い細胞群を選択的に排除し、組織を構成する細胞の分裂速度を均一化させることで、器官形成のロバストネスを向上させていると考えられる。また、細胞競台は器官形成過程の調節のみならず、組織に生じた異常細胞の排除、癌細胞の優勢的増殖、さらには幹細胞ニッチにおける優良幹細胞の選択など、器官の恒常性維持や種々の疾患メカニズムにおいても重要な役割を果たすことが示唆されている。本研究は、ショウジョウバエ上皮をモデル系として用い、細胞競合を介した上皮の動的恒常性維持システムの動作原理を明らかにすることを目的とする。具体的には、上皮に誘導した極性崩壊細胞が細胞競合によって組織から排除される現象に着目し、極性崩壊細胞を取り囲む正常組織がいかにしてこの細胞排除を引き起こすのか、その分子機構を遺伝学的スクリーニングにより明らかにしていく。平成21年度は、約1000系統のP因子挿入突然変異系統ライブラリーを用いてスクリーニングを行い、極性崩壊細胞を細胞競合によって排除できないショウジョウバエ変異系統1系統を単離することに成功した。現在、この突然変異系統の責任遺伝子を同定中であり、同定後はその遺伝子産物の生理機能と細胞競合における役割を遺伝学的に明らかにしていく。
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