2010 Fiscal Year Annual Research Report
生物界最小ゲノムをもつ共生細菌カルソネラの生存を支える宿主昆虫細胞の機能解析
Project/Area Number |
21687020
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
中鉢 淳 独立行政法人理化学研究所, 宮城島独立主幹研究ユニット, 基幹研究所研究員 (40332267)
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Keywords | キジラミ / bacteriome / カルソネラ / トランスクリプトーム / 第二世代シーケンサー / RNA-Seq / ゲノム解析 / 二次共生細菌 |
Research Abstract |
半翅目昆虫キジラミ類は、体腔内にbacteriomeとよばれる特殊な器官をもち、その構成細胞内に必須共生細菌カルソネラ(Carsonella ruddii,γ-プロテオバクテリア)を保有する。我々の先行研究により、北米産キジラミPachypsylla venusta(カルソネラ以外の共生細菌を持たない)のカルソネラのゲノムは160kbと極小で、生存に必須と思われる多くの遺伝子を欠くことが明らかとなっている。この不完全なゲノムを補償し、カルソネラの生存を支える宿主側の機構を解明するべく、本年度はまずP.venustaのbacteriomeおよび虫体全体からcDNAライブラリーを構築し、第二世代シーケンサーGS FLXシステム(454Life Sciences/Roche)を用いて解析を行った。また、日本を含むアジア地域をはじめ、世界的に分布を広げつつあるミカンキジラミDiaphorina citriは、グリーニング病を媒介し、カンキツ類に致命的な被害を与える重要な農業害虫だが、そのbacteriome内には、カルソネラに加えて二次共生細菌(β-プロテオバクテリア)が共存する。これら2種の共生細菌は、いずれもミカンキジラミの生存に必須であると考えられており、新規防除法開発の有望な標的となる。また、P.venustaにおける宿主-カルソネラ間の二者関係とミカンキジラミにおける宿主-共生細菌2種間の三者関係を比較することで、真核生物-原核生物間の共生について理解が深まると期待される。こうした事柄を念頭に置き、ミカンキジラミについてもbacteriomeや虫体全体から複数のcDNAライブラリーを作製し、解析を行った。さらに、前年度に全塩基配列を決定したミカンキジラミ共生細菌2種のゲノムについて各種解析を進め、多くの重要な知見を得た。
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